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「山乃尾」の庭園から眺めた「ひがし茶屋町」。黒光りする瓦が印象的です。 |
日本海と白山連峰に挟まれて、新鮮な食材に恵まれた城下町金沢。当時32歳の若き魯山人が、北陸路を食客生活を続けながら金沢を訪れた大正4年頃も、今と変わらぬ四季折々の食材の豊かさに感動したに違いありません。
今回御紹介する「
山乃尾」は明治23年11月開業。金沢城から見て卯辰の方向(東南東)にある卯辰山の中腹に、二千坪もの敷地を持ち、その中に母屋を始め11部屋の離れ座敷を擁し、開業当時の雰囲気を今も大切に伝えています。
まずはふもとの「ひがし茶屋町」から坂を登っていくと、坂の上にある古色蒼然とした木の門があります。そして、明治の昔と変わらぬ苔むした石畳のアプローチを進んで行くと、かつて同じように、ここを歩いた数々の歴史の登場人物に思いを馳せつつ期待に胸が膨らみます。
今回案内されたのは、母屋の2階の、2人用としてはもったいないくらいの広くゆったりとした座敷。大きな一枚ガラスの窓からは広大な庭と遠く金沢市内が見渡せ、これから伝統の加賀料理を戴く舞台としては申し分のない室礼です。
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加賀料理と言えば、やはり「治部煮」。 |
料理は、加賀料理の伝統料理を始め、洗練された料理の数々はどれも繊細で上品な味わいのものばかり。例えば、加賀料理の代表格とも言える「
治部煮」は、輪島塗の「治部椀」の中に、合鴨などの具材が入った椀物で、出汁の繋ぎには「葛」ではなく、「小麦粉」を使うというのが、「治部煮」を語る上で欠かせないポイント。これが独特の舌触りを生み出しているのですね。
また、この「治部煮」には他にも、加賀のブランド野菜の一つ「金時草」も入っていたりするなど、加賀料理の見本のような素晴らしい仕上がりで、正直・もう一杯おかわりしたかったほどでした。
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別所産の筍。春の御馳走です。 |
他にも、様々な料理を堪能しましたが、特に印象に残った逸品が、この日にいただいた季節の混ぜ御飯。これには加賀ブランド野菜の一つ金沢の
別所産「筍」が使われており、その上質な味わいには驚かされましたね。京都の「白子筍」以外で、ここまで感激した「筍」は初めてかも。
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水菓子にも加賀ブランド野菜(五郎島金時)が使用されています。しかも、使われている「切子」と「銀」の受け皿は、さすが加賀の老舗ならではの立派なもの。 |
加賀野菜や地元の魚介類など、厳選された食材を使った伝統的な加賀料理を、二千坪の広さを誇る老舗料亭の粋な空間で食べていると、加賀の食文化の奥深さを改めて実感しますね。
ひがし茶屋町を高みから一望できるロケーションの良さや、風情のある建物、伝統なども含めて、まさに金沢を代表する名料亭といえるでしょう。
<DATA>
・店名: 山乃尾
・所在地:石川県金沢市東山1丁目31-25
・アクセス:JR「金沢駅」徒歩約25分(タクシー移動推奨)。
・地図:
Yahoo!地図
・TEL:076-252-5171
・営業時間:11:00~14:00(LO)、17:00~22:00(LO)
・定休日:原則として無休