●"察する文化"と"話す文化"
バンクーバーでは1997年から2002年まで国際結婚カップルを対象とした「国際結婚ワークショップ」という催しが定期的に行われていました。
以下は、その内容を伝えている私のホームページの記事からの抜粋です。
「たとえば、妻が日本人、夫がカナダ人の場合、ケンカをすると妻が黙ってしまうケースが多いらしい。理由の一つは、もちろん言葉のハンデによるものだ。(中略)そして言葉以前の問題として浮き彫りにされてくるのが、それぞれの文化におけるコミュニケーションの手法の違いである。
西洋の文化は言葉での表現を重んじる。Yes、Noの意志表示から始まって、愛情表現も言葉、問題解決の方法も徹底的に話し合うことから始まる。(中略)
ところが、日本の文化は『察する』とか『以心伝心』など、言葉で語られなくても相手の言わんとするところを理解しようとする文化である。『気配りができる』なんて言葉も、暗に"言う前に気がつくのを良しとしている"ようだ。
(中略)この2つの文化が、そう簡単に噛み合うわけがない。片や『意見や不満があったら言うのが当然』と思っているし、片や『こんなに態度で表わしているのに何で気が付かないの?』と思っているのだから。
夫婦間でこういうぶつかりあいを何度か経験して初めて、その根底にある文化の違いに気付いていくのである。」
ね、ここでも「以心伝心」が使われていますよね。
こういう文化を共有する日本人同士の夫婦でさえ、“分かり合えて当然”という気持ちがどこかにあってあまり話をしないでいると、いつの間にか夫婦の心がすれ違っていたなんてことがあるかもしれません。ましてや違う文化で育った2人なら、“言葉にして相手に伝える”ことを常に肝に銘じていなければ、明らかに“違い”があるお互いの感じ方・考え方を理解していくのは難しいでしょう。
上記は日本人とカナダ人の例ですが、他の国出身のパートナーでも同じことが言えると思います。
要はカップル間のバランスです。
パートナーが“話す文化”で育った人なら、いつも話をするよう心がけるとともに、「以心伝心」的な日本のコミュニケーション法について相手に伝え、あらかじめ文化の違いを理解しておいてもらうのも一つの方法です。
また、パートナーがまだ日本語が上手ではなく、思っていることを伝えられずに黙ってしまう様子だったら、時間をかけて聞いてあげるという姿勢も大事ですよね。相手も同じくらい心の内を語れてこそ“話し合う”ということになるのですから。
日頃から“話し合う”ことを重ねていけば、国際結婚カップルだって何十年かたったらお互いの気持ちが「以心伝心」で分かるようになっているかもしれません。その頃にはきっと、夫婦で話し合うのはごく普通のことであり、パートナーと話すのは楽しいと思えているのではないでしょうか?
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