そこで一つ、思い出したことが…。
以前、大学生の女の子に「ダンナさんはミツヨさんの人生に欠かせない人なんですか?」と聞かれたことがありました。
「欠かせないって、そんな、調味料じゃないんだから…」と答えに窮してしまいましたが、今思うと彼女は「掛け替えのない人なんですか?」と聞きたかったのかもしれません。
「欠かせない」とは、たとえば「この味を出すのにこの調味料は欠かせない」とか「人間が生きていくのに空気と水は欠かせない」など、「絶対に必要なもの」を意味します。
そう考えた時、たとえば、もし、彼が突然いなくなっても、なんとかして生きていこうとする自分がいるだろうから、厳密に言えば「欠かせない人」とは言えないのではないかと思って、答えにつまってしまったわけで…(「思い出の中で支えてくれる人」という意味では欠かせないかもしれませんが)。
もし彼女に「ダンナさんは掛け替えのない人なんですか?」と聞かれていたら、照れてゴチャゴチャ言葉を並べながらも、もっとすんなり答えていたような気がします。
「掛け替えのない人」とは、その人の替わりは誰もできない、唯一無二の存在である、ということ。その人がここに居ようが居まいが、その存在が「掛け替えのない」ものであることに変わりはないのです。そういう点で「欠かせない」とは少し意味が違ってきます。
脳卒中で入院したご主人を1日も早く退院させたかった奥さんにとって、ご主人はまぎれもなく「掛け替えのない人」であったと思います。「掛け替えのない」大切な人だからこそ、ゆっくりできる自宅に戻って、ご自分の手で看病・介護してあげたかったのでしょう。
そうして過ごす日々が、また「掛け替えのない」夫婦の時間となっていくのです。
日頃、それこそ春や夏の時期に、こういうことを改めて考える機会はあまりないかもしれませんが、新しい年を迎える時や、結婚記念日、お互いの誕生日などに、自分の心にこう問いかけ、パートナーへの気持ちを新たにしてみてはいかがでしょう?
「あなたの目の前にいる人は、あなたにとって掛け替えのない人ですか?」
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