2010年7月24日、渋谷・明治通りのcocotiビルのすぐ近くにON THE CORNER - NO.8 BEAR PONDが誕生。 |
衝撃のエスプレッソ、渋谷に初登場
2009年に下北沢に誕生するやいなや、最新のニューヨークスタイルのエスプレッソで大きな注目を集めてきたBEAR POND Espresso。無造作に仕上げられた小さな店舗がこれほどまでに私たちを惹きつけるのは、潔いまでに個性的で鮮烈なエスプレッソと、クールなバリスタ文化がその空間に特別な磁力を与えているからに他ならない。そのBEAR PONDが、渋谷に2店舗めをオープン! しかも、partycompany Inc.という若い企業とのコラボレーションだという。
ON THE CORNERとNO.8 BEAR POND。入口の扉には2店の名前が並ぶ。 |
そんな問いを携えてオープン前日のNO.8を訪れ、短パン姿の田中さんにお話をうかがった。
「今回のチャレンジも、エスプレッソが最優先。スターバックスがシアトル流エスプレッソの【空間】の楽しみを広めたけれど、エスプレッソそのものは、まだまだ消費者の生活の一部にはなっていない。もっとエスプレッソを広めたいし、バリスタが活躍できる舞台を増やしたいんです」
田中さんをいきいきと駆りたてるのはいつも、エスプレッソそのものが放射する強いエネルギーなのだ。
床板のところどころに、赤や白のテープが貼られて面白いアクセントに。これはかつてアメリカの学校の体育館の床材として使われていた名残り。 |
カフェ「ON THE CORNER」とのコラボレーション
NO.8 BEAR PONDは、カフェ「ON THE CORNER」のエントランスに店を構える。カフェはpartycompany Inc.が運営。(こちらも後日、記事でご紹介します)輝く純白のエスプレッソマシンは、下北沢のBEAR PONDと同じ特別改造版ラ・マルゾッコ。壁には5連の浄水装置とフレンチプレス。ガラスのショーケースにはBoulangerie Aの魅力的なパンと小さな焼き菓子が並んでいる。
カウンターには田中さんの厳しい特訓を受けてきた2人のバリスタが立つ。 ここでドリンクを注文して支払いを済ませ、カップを受け取ったら、NO.8 BEAR PONDの店内で飲んでもいいし、奥にひろがるON THE CORNERに持ち込んで食事やデザートと一緒に楽しんでもいい。テイクアウトもOK。
そんな気持ちのいい自由を実現したのが、BEAR PONDとpartycompany Inc.のコラボレーションの痛快さだと思う。田中さんの職人的こだわりを受け入れるpartycompany Inc.の懐の深さも感じられる。
「Gateway to Freedom(自由への入口)」
印象深い言葉が田中さんの口からぽろりとこぼれた。新しいお店のかたち。エスプレッソは田中さんにとって、自由な生きかたの象徴なのかもしれない。
白壁を飾る2つのフレーム。1枚はジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のポスター。もう1枚はブルース・ウェーバーの写真。 |
バリスタ筋肉、養成中
シンプルでリラックスした印象の中にさりげないセンスがのぞく内装は、ON THE CORNERと同様にtripster Inc.が手がけた。小綺麗にしすぎないのは下北沢のBEAR PONDそのままだけれど、より幅広い層のお客さまを受け入れる雰囲気に。「下北沢のほうは、マニアックな実験もできるラボ的な【おもちゃ箱】にする予定。バリスタのトレーニングをしたり、メニュー開発をしたり。そこでお客さまに受け入れられた完成形をNO.8に持ってこようと考えています」と田中さん。
海外からもわざわざその一杯を飲みに訪れる人々がいる田中さんのシグネチャードリンク「ジブラルタル」や「ダーティー」を抽出できるのは、おそらく彼自身しかいない。それらは今のところ下北沢だけの提供で、NO.8のメニューはおいしいラテが中心となる。
NO.8の二人の若いバリスタは、すでに他店でバリスタとしてキャリアを積んでいたにもかかわらず、BEAR PONDならではの味を実現するために、田中さんに筋肉の使い方から始まる一連の厳しいトレーニングを受けた。
「ニューヨークスタイルの真髄は、スピードと正確さ。それを実現するために、バリスタには筋肉のコントロールが要求されます。たとえば、一瞬で正確にタンパーに体重をのせることができれば、大量の注文をこなす場合もスピーディーだし、疲れない。そのための筋肉の使い方、鍛え方があるんです」
ラテ(370円)。店内で使うものは全てアメリカから取り寄せている。ロゴを入れたカップ&ソーサーもニューヨーク製。 |
ニューヨークスタイルのバリスタ文化を
しかし、各人が抽出するラテの味を完璧に同じにすることは目指していないと田中さんは言う。「バリスタ全員に均一な味を求めると、マニファクチャーになってしまう。この範囲がBEAR PONDの味だというセーフティ・ゾーンを決めて、その中で二人に『自分の味』を出してほしいんです。もちろんバリスタには、抽出のテクニックだけではなく、エスプレッソマシンという生きものとつきあう技術や、コーヒー豆に対する知識、お客さまへの呼びかけも必要」
NO.8 BEAR PONDを訪れる人々に、味と同時に伝えたいのは、ニューヨークで活躍するバリスタたちの粋なプレゼンテーションやファッション。要するに、刺激的なNYエスプレッソ・カルチャーの魅力を丸ごと。 ちなみに、NO.8に立つ二人のバリスタにも素敵なタトゥーがあるとか。
(左)テイクアウト用の紙コップには、1個ずつ手でハンコを押してある。(右)ガラスのジャーに入ったLatte Jar(520円)。バリスタがジャーをすばやくシェイクすると、豊かな泡が生まれる。 |
NO.8というインスピレーションをもたらしたのは…
「NO.8」は、店名に直感で数字をつけようというプロジェクトメンバーの提案から生まれた。そこで田中さんの脳裏にひらめいたのが8。
使用しているスペシャリティーコーヒーの評価基準が、カッピングの項目( fragrance, aroma, break, brightness, flavor, body and aftertaste)において「10点満点中、8点以上」であること。
ON THE CORNERがpartycompany Inc.の、都内8店目となる飲食店舗展開であること。そして、BEAR PONDという○とpartycompanyという○、ふたつの輪をつなげると8というかたちになることが決め手となったそうだ。
お店の間取りを空から俯瞰しても、8に見える。循環しながら無限に広がっていく8のエネルギー。
(そういえば、BEAR PONDのBも8に似ている。そして、BEAR POND Espressoという店名の中には、ふたつの○がある。これはたったいま気がついたこと)
(左)ショップカード。(右)カフェ側からNO.8を眺めると、美竹公園の緑と陽光が窓に映える。 |
自由への入口
開店後にあらためて訪れて、使い勝手の良さに感嘆した。NO.8で冷たいラテを受け取り、そのままON THE CORNERの席につき、ランチを注文。魅力的なインパクトを持つアイスラテは、お料理が運ばれてくるまでの格好の食前ドリンクになった。食前酒にしろ食前カフェインにしろ、「飲みながらお料理を待つ」ことの小さな幸福感。ランチにはドリンクがセットされているので、もちろん食後のカフェインも満喫した。
3度めに訪れたとき。すでにお客さまがNO.8とON THE CORNERをスマートに使いこなしている光景を見かけ、ちょっとわくわくしてしまった。
ON THE CORNERの入口近くのテーブルを囲んだ人々が、飲みものがなくなるとNO.8に行って注文し、受けとって戻ってくる。かと思えば、ON THE CORNERのスタッフを呼んでお料理を注文している。両店の魅力をたっぷり享受しながら、くつろいだ時間を過ごす人々。
Gateway to Freedom。
BEAR PONDの魂に刻印されているその言葉が、なにげない日常の光景としてそこに実現されていた。そんなシーンはいつでも、私を魅了してやまないのだ。
NO.8 BEAR POND menu
Beverage ※テイクアウトできます。ラテ …370円、 アメリカーノ …350円
レッドアイ …480円、 コーヒー …350円
アイスラテ …400円
Latte Jar(ジャーに入ったアイスラテ) …520円
Breads and Sweets
Boulangerie Aのパンやビスコッティ、ラスクなど
shop data
NO.8 BEAR POND(ナンバーエイト・ベアポンド)【住所】 東京都渋谷区渋谷 1-17-1 美竹野村ビル1F
【OPEN】 9:00~18:00
【CLOSE】 無休
【MAP】 Yahoo!地図情報
【最寄り駅】 JR「渋谷」駅東口より徒歩5分(地階の「副都心線」13番出口から徒歩30秒)
関連情報
BEAR POND Espresso(下北沢)BEAR PONDのX'masは「ジブラルタル」!
伝説のグルーピーの名を冠したエスプレッソ
エスプレッソ焙煎・ノリヨシミローステリア
STREAMER COFFEE COMPANY(渋谷)
フリーポア・ラテアート世界チャンピオンの澤田洋史さんがオープンしたお店「ストリーマー・コーヒー・カンパニー」は、NO.8 BEAR PONDから徒歩2分!