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カリモクのソファが並ぶ店内は、ふんだんに余白をとった贅沢な空間づかい。 |
ひとしずくの水滴から波紋がひろがるように
2009年7月、神田のもと問屋街の一角に、広々としたカフェが誕生しました。もとは自動車の整備工場だったという築50年のビルの1階を改装した空間に、ソファがゆったりと並びます。オーナーは大企業に勤務していた小松俊之さん。
「仕事は面白かったのですが、35歳を迎えたとき、この先自分は何をしたいのかを真剣に考えたら、20歳の頃に考えていたことと同じ地点にたどりついたのです」
20歳前後の小松さんは、美容室と撮影所とアパレルを兼ねた不思議な場所に出入りしていたそう。
「そこが自分のベースになり、集まってくる大人たちに良い刺激を受けていました」
日常的に人々が集まって影響を与えあう場所をつくる…それがOnE drop cafeで小松さんが実現したいこと。一滴のしずくが水面にしたたり、その波紋が静かに遠くまでひろがっていくように、ひとりひとりの小さな願いが誰かの共感を呼び、豊かなつながりが生まれれば、と。
初めてお店のロゴを見たとき、Eの大文字が印象的なので「江戸」のアナグラムかと思ったのですが、Eが意味するところはEarthでした。 |
自動車整備工場の面影を活かして
見上げる高い天井。店奥の壁面に残された無骨なシャッター。蛍光灯が取りつけてあった痕跡。そこかしこに整備工場の面影をとどめる店内は、「作りこまないほうが居心地がいい」との理由で、ざっくり編んだセーターのような気取らない風合い。その空気感は訪れる人々にさまざまな連想を呼び起こすようで、「NYのソーホー地区にこういうカフェがあった」「よく通ったロンドンのイーストサイドのカフェに似ている」という感想から、はては「地元の新潟のカフェみたい」…という反応まで、誰にとってもなぜかしら少し懐かしい感じが漂っているようです。
小松さんの故郷は新潟。自慢の料理メニューにも、新潟名物、栃尾のジャンボ油揚げ(通常の3倍サイズ!)が取り入れられています。さっそく次ページでご紹介しますね。