「コーヒーを淹れている間に、ふと思い浮かぶものがある」と南さん。 |
コーヒータイムは神さまのギフト
何足ものわらじを履いて多忙な日々を過ごす南清貴さんですが、一日に一度、15分ほどの時間をつくって丁寧にコーヒーを淹れるリフレッシュタイムを大切にしているそう。
「コーヒーを飲んでいる間はもちろん、お湯を沸かしたり豆を挽いたり、コーヒーを用意する作業のあいだにも、ふといろいろなことが思い浮かぶのね。それがイマジネーションの喚起につながる。だから、コーヒータイムがなければ得られないものがあるんだと思う」
力をふっと抜いてコーヒーを楽しむ時間は、神さまが人間に与えてくれた素晴らしいギフト、と南さん。
「そのコーヒーがインスタントじゃ、リフレッシュできないよね」
南さんにとって仕事の達成とは、自分のなかに生まれたイメージを豊かに育て、実現すること。お料理のアイディアも、まず完成形のイメージが天から降ってくるのだそうです。
「自分のなかで機が熟したものを表現し、実を結ばせることは大きな喜び。そのためには、どんなに日々の生活が忙しくても、イマジネーションを膨らませる時間を確保することが必要でしょ。頭の中でビジュアライズできないことは、実現できないから」
実際にこれまで南さんがイメージを現実化してきた数々の例をうかがうと、奇跡のような出会いの連続なのです。たとえ口に出さなくても、実現したい夢の明確なイメージを抱いていると、誰かと一緒にいても自然にその場のエネルギーに変化をもたらすようです。
(左)絹のコーヒーフィルターを使用 (右)間菜舎のコーヒー豆。ブラジルの下坂農園で栽培。 |
焙煎職人・高田啓治さんとの出会い
キヨズキッチン時代に南清貴さんが「きちんと力のある、おいしいコーヒー」を求めて出会ったのが「間菜舎(まなしゃ)」。焙煎職人・高田啓治さんが伊豆の山里で焙煎しています。
「高田さんを訪ねたときの第一印象は、お互いに『やっと会えた!』。会った瞬間に、なつかしい感じがした」
高田さんはもと大手のコーヒーメーカーの焙煎技師。自分が本当に納得のできるコーヒーを焙煎するために会社を辞めて山奥にこもり、奥様と二人で小さな焙煎工房を始めました。
「高田さんは仙人みたいな人。いい農園の畑で作られたいい豆だけを選んで、手間をかけて焙煎するコーヒーなんて、安価で作れるわけがない。そのことが世間の人にはなかなか理解されないだろうと覚悟を決めて、野菜や米を作る自給自足の生活を始めたんです」
生き方にも共感するところの多いお二人です。