人町=コーヒーの香りで人と町をつなぐ
お湯が沸き踊るサイフォンが目を惹くカウンター。市場の一角にあるような気取らないコーヒー屋さんの風情。「珈琲人町」という魅力的な店名には、コーヒーの香りで人と町とをつなぐ、という想いが込められています。
「コーヒーは生鮮食品。つねにフレッシュなコーヒーをご用意しています」と、落ちついた穏やかな物腰で話してくれたオーナーは竹下雅哉さん。長崎市内で青いワゴン車によるコーヒーの移動販売を3年間おこなった後、2008年からこの場所に小さなお店を構えました。
竹下さんは自宅近くに焙煎小屋を作り、毎朝、ラッキー社の4kg釜で焙煎しています。
「家庭用にコーヒーを買っていかれる人も多いのですが、豆ではなく、粉でお求めになるお客さまが多く、そうすると劣化が早いんですよね。いつ飲まれるかもわかりませんので、少しでも新鮮な状態で飲んでいただけるよう焙煎したてのコーヒーをお渡ししています」
コーヒーの仕事のきっかけは染め物から始まったといいますから、人生は不思議なものですね。かつて竹下さんは福岡で染色に携わっており、そこでは染め物に大量の水を使用するため山から水を引いていました。その澄んだ水でコーヒーを淹れたら際立って美味だったのだそうです。
やがて福岡の珈琲専門店に勤務して焙煎とサイフォン抽出の技術を身につけたのが、竹下さんのコーヒー店への第一歩。染め物とコーヒーには「水」以外にも共通点がありますか、と訊ねてみました。
「そうですね、コーヒーの焙煎は豆の持ち味を自然に引きだせるよう、無理に火を入れたり、無駄に火を入れたりしないのですが、染め物も不自然なことはしないよう心がけていました」
素直でシンプルなおいしさを大切にしている珈琲人町。▼人気のメニューをうかがいました。