大谷石のえんがわに座って
現在では左官業の人々さえ三和土(たたき)の作り方を知らないことが多いといいますが、横山さんは自ら三和土作りの教室で学び、好日居の玄関の土間を友人とともに叩いて仕上げました。
靴を脱いで家にあがった人をまず迎えてくれるのは、胡桃色をした古いオルガン。右手の板張りの部屋は、白い漆喰の壁に自然光の差しこむギャラリー空間。
左手の仄暗い和室は日本古来の自然塗料、柿渋と紅殻を用いて、壁や天井を美しい色彩に塗りあげています。
坪庭に面した広いえんがわは、「シルクロードの間」とでも呼びたくなるしつらえでした。床に敷きつめられているのは、横山さんがわざわざ栃木県大谷まで出向いて採掘を手伝った大谷石。その上に、現代ヨーロッパからユーラシア大陸を横断して古墳時代の日本まで、隊列を組んで遙かな時間と空間を旅してきたという趣の調度が並びます。
絨毯の上に腰をおろして、横山さんが青空を求めてウズベキスタンを旅したときに出会ったという青いうつわで、抹茶とお菓子をいただきました。静かな時間が一滴、枝を離れてしたたり落ちるのが見えるようなお茶の味わい。