茜やのメニューは「静岡茶セット」(500円)のみ。まず、作家もののうつわの並ぶガラス戸棚から、お客さまが好きな湯飲みを選びます。人気の高い恩塚正二さんのうつわや、萩の作家、濱中史朗さんのうつわなど、「煎茶にはぽってりしたうつわよりも、研ぎ澄まされたシャープな線を持ったうつわが合うと思いますので」という柳本さんのセレクト。
1煎目は甘み、2煎目は苦み、3煎目は渋みを
最初の1煎目は、日本茶インストラクターの資格を持つ柳本あかねさんが、鉄瓶に沸くまろやかなお湯を使って淹れてくれます。2煎目からはお客さま自身で、ご自由に淹れてお楽しみください、というスタイル。おいしい淹れ方を記した薄紙が1枚、添えられています。
一般的には、上煎茶には70℃~80℃のお湯を用いますが、茜やでは、より甘みをひき出すために1煎目を60℃という低めの温度で淹れています。2煎目は、茶葉の持つきりっとした苦みを楽しむために、もっと高い温度で。3煎目では高い温度で、抽出される渋みを楽しんで。次々に表情を変えていく日本茶の味わいを、静かな気持ちで感受してみてください。
お茶うけには、季節感に富んだ各地のお茶菓子が5種類用意され、その中から2種類を選ぶことができます。この日は鶴屋吉信のあやめを象った「擦り琥珀」と、俵屋吉富の「さんしょ餅」をいただきました。
茜やの魅力は、日本茶のおいしさばかりではありません。古い木造アパートの一室にあまり手を加えることなく、センスの良いしつらえで、作家もののうつわや雑貨の美しさを際だたせているのです。