1階にはテーブル席が並び、奥の小上がりは居心地のよいソファ席に変身。かつては浴室だったという小さな空間にはアーティスティックな花々がディプレイされ、床の間を思わせるしつらいになっていました。これは洞爺湖サミットの際に会場となったウィンザーホテルのフラワーアレンジメントを手がけた花千代さんから贈られたものだそう。
小さなドアに「ボイラー室」の札が貼られているのは、一時、クリーニング店だった名残り。昭和の庶民の生活の記憶が堆積している古い家屋では、こんな“痕跡さがし”が楽しいですね。
急な階段をのぼった2階は「おばあちゃんちのような雰囲気」をテーマに、畳の上にソファや座布団を配し、落ちついた空間をつくりあげています。変色したふすまに嵌めこまれた取っ手や、模様入りの窓ガラスなど、古い建具のディテールは見飽きません。 ことに心惹かれたのは、葦簀(よしず)の下がる出窓の風景。小さな盆栽や、朱色の濃淡を連ねるほおずきの鉢が眼を喜ばせてくれます。 下町の路地裏を散歩すると、しばしば民家の軒下に盆栽をぎっしりと並べている光景に出会いますね。長屋住まいで庭が持てなくても緑と花々に囲まれた生活を楽しむことはできる、そんな地に足のついた知恵のようなものを感じます。 この2階では、畳の空間のフレキシブルさを活用して、落語会などの催しもおこなわれています。 |