カフェを始めた理由
会社員時代の上村さんはつねに仕事で忙しく、毎晩遅い時間に帰宅する生活を続けていました。休日や珍しく早く帰れた夜の楽しみは、直子さんといっしょにあちこちのカフェに出かけ、「一緒にゆっくりできる[時間]や、日常の忙しさをふっと忘れさせてくれる[空間]、そしてお酒ではなくおいしい[コーヒーとスイーツ]をいただきながら[会話]を交わすこと」。そんなふうにしてカフェで過ごす夜の時間は、料理をメインとするお店や、お酒を飲むためのお店にはない、豊かな夜のシーンだと感じたのだそうです。メニューは少なくても、ほっとできる空間とほっとできるコーヒーとお菓子があり、ひとりでも、誰かといっしょでも、ほっとできる時間を楽しめる。それが上村さんの考えた理想のカフェの姿でした。
「何でも揃っているお店も良いけれど、余計なモノがなくて少し物足りないからこそ、そこに流れる時間や空間や香りをじっくりと楽しみ、落ち着けるトコロ。 そいうトコロが見あたらなかったのが、トコロカフェを作るきっかけになりました」
実際に経営を勉強してみると、「駅から遠い静かな場所で、ゆったりと余白をとった空間の中で、お酒も煙草もランチもなく、コーヒーとお菓子だけでやっていくのが難しいこともよくわかりました。だから、世の中にないのだなと(笑) そういうカフェをやりたくても続けられないのですよね。 でも、果たして本当にそうなのでしょうか?……そこからtocoro cafe計画がスタートしたんです」