“無用の長物”たちが引き立てる和の空間
アナログでは、古い住まいの片隅で埃をかぶっていた“無用の長物”たちが手を加えられ、新しい装いでお客さまを迎えています。
五味さんの祖母の家は江戸時代前からすでに存在していたという藁葺き屋根の建物。現在でも藁を足して住み継いでいるのだそうです。
最近まで2階で蚕を飼っていたり、土壁の中から武田信玄にもらったという手紙が出てきたこともあるなど、長い歳月を生き抜いてきた家は、簡単には全容を把握しきれないおもしろさに満ちているようです。
その家屋の片隅で眠っていたロッキングチェアが、今はカフェの床で揺れています。古いそろばんは窓辺のオブジェとして飾られ、おじさんが集めていたという昭和時代のマッチの数々は、一面に並べられて壁のアクセントに(写真上)。大小さまざまな古いボタンは、五味さんがみずから一列に繋ぎあわせて天井から下げ、簾(すだれ)のかわりに。
五味さんの祖母は90歳を越えた今もご健在だそうです。
「祖母は若いころに学校の先生として活躍し、校長先生もつとめたパワフルな女性。私が渋谷につくったカフェにも、ビルにエレベーターがないのに、頑張って階段をのぼって来てくれました」
五味さんの記憶には、子どものころ、眠れない晩に祖母が背中をなでてくれたシーンがあたたかく残っているそう。