路上のパン屋「吉ぱん」からスタート
食べることを介したコミュニケーションに生き甲斐を感じるという村山さん(写真右)が、アルバイト先で知り合った友人と二人で、移動パン屋「吉ぱん」を始めたのは2003年のことでした。もともと大変なパン好きだった二人は、少ない資金で開業できる移動販売に着目し、ワゴン車で吉祥寺の公園などに屋台を出したのです。
気取らないメロンぱんや季節のお総菜パンは好評を博しましたが、2年後、村山さんは自分なりの工房を持つために独立。
「ちょうど学生時代からの友人夫妻も、自分たちが居心地よく過ごせる場所を求めてカフェのオープンを考えていましたから、3人でマンションの一室を借りてこじんまりしたお店を始めようか、と相談がまとまったのです」
最初はごく小さなカフェを予定していたそうですが、いざ計画の実現に着手してみると、ああしたい、こうしたいとプランが膨らんで、結局は二面の壁に明るい窓を持つ20坪のカフェが誕生。
「この物件との出会いが決め手になりました」という築30年になる雑居ビルの1フロアは、もとは雀荘だったそう。
修理の可能な家具を選んで
友人と二人でスイーツを食べるのも楽しそうだし、夕方、ひとりでグラスワインを飲みながら本を読むのに最高と思える、肩の力の抜けた落ち着きのあるインテリアは、大林夫妻と村山さんの3人が手がけました。
都内の家具ショップを回って家具選びをしたときの基準は、“一度、人の手に渡って時間を過ごしたもの”、“ぬくもりのあるもの”、そして“修理のできるもの”。
「壊れたり汚れたりしたら、それでおしまい、という使い方はしたくなかったのです」と村山さん。
中央に造られた、キッチンと客席を仕切る大きく機能的なカウンターや床は、大工さんに教わって自分たちの手で塗装を仕上げました。美大出身の三人は、もともとモノづくりを得意とする人々だったのです。