廃墟めいた古道具ギャラリーカフェを訪ねて
古びた建物の半地下にひろがるほの暗い空間。小さな木枠の扉。低い天井の下に並ぶ、歳月を経てくすんだ風合いに変化したモノたち……好きなひとにはたまらない磁力を帯びて眼にうつる場所です。古道具屋、ギャラリー、カフェと3つの顔をあわせもつhigh-kyoは2003年4月、麻布十番のはずれにオープンしました。店内にところ狭しと並んでいるのは「昭和30~40年代」を鍵として集められた家具や雑貨の数々。
けれども、high-kyoが模索しようとしているのは、単なる古道具屋でもギャラリーでもなく、もちろんカフェにもとどまらない「何か」であるように思われます。その着地点はどこにあるのでしょうか。
今回は、この独特の空気が漂うお店の魅力をご紹介しますね。
築40年以上のビルの年輪
high-kyoは昭和39年に建設された「太郎坊ビル」の地階にあります。ある時期は物置として使われたり、ある時期には飲食店になったりと、何十年ものあいだに小さな店が入れ替わり立ち替わり入居して、この地下空間にさまざまな記憶を堆積してきました。high-kyoのオープン直前の姿は、2軒並んだ小さなスナック。high-kyoはその2室の壁を抜き、ひとつにつなげて誕生しました。カフェ部分に残されている木のカウンターは1970年に作られたものだそうで、言われてみればなるほどその時代の匂いがするようです。
次のページで、オーナー千村幸弘さんにうかがった”廃墟”観や、お店で扱うモノ選びの基準についてお伝えします。