廃墟とは「質感の変化」

ハイキョの金魚写真オーナーの千村幸弘さんは12年前、27歳のときに古物商だった父親の手伝いを始め、やがて代官山で古道具店を営むようになりました。

◆千村さんにとって、古いものの魅力とはなんでしょうか?
「物質の持っている質感に魅力を感じます。新しいモノを見るときも古いモノを見るときも、質感という同じ視点から見ています」

◆質感とはどんなことを指すのでしょう。
「○○心地、という言葉がありますね。座り心地とか、寝心地とか。その『心地』を判断する材料が質感だと思うのです。すべてがなめらかであればいいというのではなくて、ざらざらな質感であっても、角がとれてまるくなった質感であっても、それぞれに魅力がありますね」

◆店名にもなった「廃墟」の意味するところは?
「建物が老朽化していく過程は、人間にとっては”劣化”なのですが、もっと大きな観点から見ると”質感の変化”ではないでしょうか。人間の作り上げたものが、ふたたび自然に還っていく過程。そこに美しさを感じるのです。長いあいだうち捨てられたままになっている工場跡地に草が茂っている光景などは、すでに半分自然に還っている姿に見えます」

そのようなわけでhigh-kyoの店内には、灰色の濃淡を見せるざらざらした床、まるくなった角の塗料が剥げかけた木の戸棚、かつての用途が想像できない道具など、時間を内包したモノたちの豊かな質感に溢れているのです。それらの品々も、さらに何十年か何百年かの歳月を経れば、自然に還っていくのでしょう。

▼昭和30~40年代のモノたち