特別注文した家具と食器
内装はシンプルで木のぬくもりを感じさせるもの。一見、なにげない造りのようですが、そのじつ、「気がつかなければ気がつかない」楽しいディテールがあちこちに隠れています。たとえば、美しい革のドアノブに刺繍してある小さな音符マーク。これと同じ音符が、バーバラ・アイガンの乳白色のカップに注がれたコーヒーを飲み干したあとに、カップの底からも現れます(写真下)。これははcafe ODARAのために特別に描かれたもの。
座るひとの身体にやさしく沿う椅子は、飯田さんが茅ヶ崎の家具工房、ロビィのinu it funiture(イヌイットファニチュア)に注文したオリジナル。座面はおしりと腿のかたちにあわせて微妙にくぼんでいて、長い時間すわっていても固さを感じさせません。椅子と同じ木材で、カップとスプーンを置くための小さなくぼみがついた美しいソーサーも作られました。紅茶のポットは持ち手が熱くならないようキュートな革製カバーでおおわれているのですが、これは音符マークのついた革製ドアノブといっしょにノグチ靴工房にお願いしたそう。
カフェで使われているものひとつひとつが、時間をかけてじっくりと吟味されたものであること。お客さまの使い勝手が最優先されていること。しかもそれらが「どうだ!」と騒がずに、いともさりげない、のんびりした表情をしていること。
コーヒーを飲んでいると、そのようなことにゆっくりと、ひとつずつ気がついていくのです。気がついた瞬間は、やすらかな気持ちの底で、小さな嬉しさがスキップしたりするようです。そう、コーヒーカップの底にそっと隠れているあの音符のように。