カフェが実現できるもの
お店はなぜ「カフェ」と名づけられたのでしょうか?「カフェの自由度に魅力を感じたのです」
と伊藤さんは言います。レストランと比べると、作り手も、お客さまも、カフェのほうがはるかに自由なスタイルで楽しめるのです。また、ひと部屋はギャラリーとして開放されていますが(写真下)、これも伊藤さんが海外滞在中に、カフェの壁にアートが飾られたり、何気なくライブが行われていたりするのを体験し、魅力を実感したことから設けられたもの。
視線はさらに、お店を越えて町全体にも向けられていました。
「このあたりは戦災に焼け残って<奇跡の土地>と呼ばれた場所。古い長屋のたたずまいは、日本の若い人々だけでなく、ワーキングホリデーで来日している外国人たちをも惹きつけています。その人々が空いた長屋に住み、この界隈の職人のおじいちゃんたちの技術を受け継ぐような交流ができたらいいなと考えています。共感してくれる人々は少なくないのですが、自分自身があまりにも忙しくて、せっかくお店を通してひろがった人脈が活かせていないのが、少し残念ですね」
カレーの仕込みからパンを焼くことまで、なにもかも自分でしたいから、時間が足りないのが最大の悩みという伊藤さん。しかし、その姿はいきいきと熱意に溢れていました。現在でも毎年2月にはお店を休業し、刺激を受けに海外に出かけています。今年2月に出かけたのは学生時代に訪れた南インドのケラーラ州。(ちなみにここは私が幼年時代を3年間過ごした場所でもあります) 地元のレストランに頼み込んで、ケラーラ州独自のパラータを作る特訓をしてもらったそうです。