broom&bloomの店内に置かれている家具は、ほとんどが中古品や廃材。ほうきのかたわらで、ショップカード入れの役割を果たしている赤サビの美しいちりとりも、解体現場から調達したものでした。どうやらヤシマさんには拾いモノ、もらいモノに恵まれるという特殊な運があるらしいのです。
ある日、古い日本家屋4軒を解体する現場を眺めていたヤシマさんは、作業中のおじさんに「好きなものを持って行け」と声をかけられました。カフェ開業を考える人間にとっては宝の山のような現場。
廃材たちは、「清掃が大好き。ものごとに行き詰まった時はそうじをします」というヤシマさんたちの手で丁寧に磨き上げられて新たな生命を宿し、broom&bloomの空間に心地良さげにおさまっています。キッチンで光る二層シンクも、民家の裏に雨ざらしになっていたのを見つけてもらってきたというから驚き!
幸運な出会いは、おそらく日々の思考と感覚の丁寧な積み重ねと、楽しげなまなざしが呼び寄せるものなのでしょう。ヤシマさんと2人の女性スタッフの姿に、そんなことを感じました。
ところで、なぜ都心に出店せず、この町に? 函館出身のヤシマさんに尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「生活の場所でこそ、お店を開きたいと考えたのです。かつては横浜近くの新興住宅地に住んだこともありました。その町には子どもたちもたくさん暮らしているはずなのに、放課後に姿を見かけることがなかったのです。夜になってから塾の袋を下げて帰宅する子どもたちにすれ違うだけでした。この町では夕方、道草して遊んでいる子どもたちに出会えるんですよ」