坂の上に建つ一軒家をカフェに
このカフェの存在を教えてくれた人はみな、一瞬だけ声の調子を落とし、ちょっと悔しそうに「本当は隠しておきたかったんだけれど」とつけ加えます。ある初夏の午後にcafe Bandaを訪れて、その気持ちがよくわかりました。良いカフェのことは誰かに教えてあげて少し自慢したい、でもやっぱり自分だけのものにしておきたい。雑誌には紹介されたくない。そんなジレンマは、きっと誰でも感じたことがありますよね。
東急百貨店本店の前を右に折れ(左に折れると松涛お屋敷見学ツアーになってしまいますのでご注意ください)、そのまま文化村通りをずっと歩いていくと、「神山町」の信号にたどりつきます。 その先の左側に唐突な感じで勾配の急な坂道がのびていて、坂のつきあたり、一軒家のベランダにコーヒーカップ型の看板をみつけることができました。
あちこちに光る
小さなディテールの魅力
白い壁のこじんまりした一軒家。1階フロアと、木の階段をのぼった2階の小部屋、それがcafe
Bandaです。2階のもう1部屋にはレコードショップ、3階にはグラフィックデザイナーのオフィスが入っています。カフェのそこかしこに、魅力的なディテールをみつけることができます。どこかノスタルジックなベランダの色。やや複雑に入り組んだ間取り。縦に細長い窓のかたち。壁は白一色かと思いきや、階段の天井や、洗面所の扉に描かれている小さなイラスト。キッチンの壁に並んであいている小さな穴。その穴からは、横になったお酒のボトルが1本ずつ首をのぞかせています。
ソファでくつろぐうちに目に入ってくるそんなディテールの数々が、訪れる人に「ちょっと特別な感じ」を与えるのかもしれません。だからこそパーソナルな隠れ家として、大事にとっておきたくなるのでしょう。
自分たちの手で店内の床板を張り、壁を塗ったという二人の女性オーナーにお話をうかがいました。