小さな町の別世界
島根県の東部、安来駅前からJR線と平行に伸びている国道9号線に沿って車を走らせること7~8分、安来と米子のちょうど中間地点にCAFE ROSSOの赤い看板が見えてきます。初めて訪れた安来という町は、失礼ながらとうてい洗練されているとは言いがたい印象。
しかし、ひとたびCAFE ROSSOの前に立ち、入り口の守護天使である焙煎機(写真右)に見守られてカフェの扉を開ければ、そこは豊かなエスプレッソの香りに満ちた別世界。高い天井から太陽光がふんだんにさし込み、湖に面したオープンテラスではシルバーの椅子が輝いています。時おりエスプレッソマシンのたてるシューッという蒸気音が、なんと耳に快いことでしょう。
あたたかな温度を感じさせる美しいインテリアは、日本の喫茶店とヨーロッパのカフェの魅力をミックスしたイメージ。白い壁に描かれた植物の模様は、もしかしたら父・門脇美己さんの経営するサルビア珈琲にちなんだサルビアがモティーフかもしれません。
CAFE ROSSOで飲んだカプチーノの味わいは、どこまでも優雅でノーブル。きめの細かいフォームミルクが唇に触れる感触は、「シルクのような泡」とはまさにこれ、というなめらかさ。ミルクの甘さとエスプレッソのほろ苦さが響き合う、調和に満ちた一杯でした。
バリスタチャンピオンシップ
CAFE ROSSOのオーナーは、2005年日本バリスタチャンピオンシップで優勝し、4月にシアトルで行われた世界大会でも準優勝を獲得した門脇洋之さん。洋之さんは2001年からこのチャンピオンシップで優勝を続けています。店内で働くスタッフも、洋之さんが作り出すドリンクに魅了され、東京をはじめ全国から集まってきたバリスタ&カフェ開業希望者ばかりです。
バリスタチャンピオンシップにおいて挑戦者たちはどのように審査されるのか、最高の一杯の秘訣は何なのか、門脇洋之さんにうかがってみました。驚いたことに、審査内容は技術面、感応面の2枚のスコアーシートにそれぞれ何十項目にもわたって書き込まれ、さながらオリンピック体操競技におけるテクニカルスキル、芸術性の両面からの評価のよう。次のページでその審査項目と、洋之さんの体験談をお届けします。