徳岡邦夫氏が魅せる「京都吉兆嵐山本店」の心意気。
デモンストレーション中の徳岡邦夫氏。腰の低い話し方が好印象でした。 |
最終日の3日目は、20時近くまで開催されていた初日、2日目とは違い、14時30分で終了。そのため、1Dayチケットもこの日は、10,000円と三分の一のお値段でした。
それでも、ワイン醸造学者・フランス食品業界の重鎮と言われるジャック・ピュイゼ氏の講演に続いて、「京都吉兆嵐山本店」徳岡邦夫氏のデモンストレーションが行われる頃には、取材陣も集中。昨夜までの熱気を彷彿とさせました。
パクチーやラー油も使った「八寸 黒盆貝寄せ(苦味デトックス効果)」。80度のフォンドボーで肉をしゃぶしゃぶにする「すき焼き2009」が、会場のどよめきをさらいます。 |
徳岡氏と言えば、「吉兆」の創業者・湯木貞一氏の孫にあたる、日本料理の演出の達人。今回のデモンストレーションも、「美味しさは人間が五感すべてを使って感じるもの」を原点に、「うま味、香り、食感」をテーマに披露されました。
左上から時計まわりに。鶏汐汁 野菜、燻製ホイップ 木の芽。グジ 焦げたパンと煮詰めたトマト+焼石にパルメジャーノ焦がして。ピュアリゾット(お米とこぶダシ)。徳岡氏がサインする様子。 |
中でも、衝撃的だったのは、コゲを調味料にすること。コゲにも魚、ご飯、パンなど色々ありますが、今回はトースト。コゲの部分だけを削ぎ落として、トマトピューレに混ぜ、これをその上にのせたグジ(魚)のソースに。焼けた石にパルメザンチーズをかけ、よく焦がして、これをまたトマトソースにつけると、ここでさらにチーズとトマトのグルタミン酸が合わさり、より美味しくなるのだとか。
このグジも、身の下部はこぶ蒸し、上部は炭焼き、皮は揚げるという、味と食感の違いをひとつにまとめていました。
また、ホイップクリームの使い方にも着目。鶏肉を前日から焼いて燻製にし、これをホイップクリームにつけておく。すると、燻製の香りがクリームにつくため、それに塩を加え、木の芽をつければ、春の味の出来上がり。本当に、息つく間もないほど、どれもこれも見入らせてくれます。
徳岡さんは言います。「センサーである舌には、味を感知するレセプター(受容体)がありますが、甘みもうま味も1種類、苦味は50種類もあります。それに対し、嗅覚は380種類。さらに、温度などを知る触覚は無数にある。だからこそ、味だけではなく、舌触りやテクスチャー(食感)など、あらゆる感覚を大切にしなければいけない」。
よく、こぶ平さんと間違われると明るく笑う徳岡氏。出だしから、「今日は落語をやりに来たんじゃないですよ。デモンストレーションをやりに来たんですからね!」と会場をわかせる努力も惜しまない姿勢は、敷居の高い最高級日本料理店の料理以外の部分で、その気さくな人柄を知る良い機会となりました。
ラストは、最新料理機器使用法デモンストレーション。
初日のディスカッション、2日目のデモンストレーションに続き、最終日も壇上に立つ、フェラン・アドリア氏。 |
最後に、「最新料理機器使用法デモ」として、液体窒素、アルギン酸、エスプーマなど最新の調理機器を使ったデモンストレーションも行われました。
舞台に立ったのは、もちろんこの分野の先駆的存在、スペイン「エル・ブリ」フェラン・アドリア氏をはじめ、「ムガリッツ」アンドリーニ・ルイス・アドゥリス氏。
手前:フェラン・アドリア氏。奥:アンドリーニ・ルイス・アドゥリス氏。 |
その内容は、胡麻油やオリーブオイルなどを、アルギン酸の中に浮かべ、キャビアさながらの粒状にしたり、コーヒーを液体窒素で穴の空いた軽石のような形状にしたり、はたまた、おたまの外側にクリームを塗り、ココナッツの器を作ったり、そして凍らせたフォアグラのスープをミキサーで粉状にして、別の温かい野菜スープの添え物としてアレンジするなど。
水1リットルに対し、キサンタン(とうもろこしから取ったガム)を1グラム以下で入れ、とろみを出す食感を、アドリア氏はこう表現します。「宙吊りの感覚」と。つまり、飲みながら食べるという、宙ぶらりなテクスチャー。こうして、とろみをつけたお醤油は、アドリア氏にとっても、とても革命的であったよう。
手前:フェラン・アドリア氏。奥:アンドリーニ・ルイス・アドゥリス氏。 |
これらの先進的手法には、スペインでは当初、「料理とは言えない」という激しいバッシングもあったそう。それを「新しいものを開拓することは素晴らしい」と助けてくれたのが、アドリア氏のまわりにいた料理人の友人たち。
アドリア氏は言います。「競争がある料理人の社会の中で、友人でいることは、とても難しいこと。それでも、15年前に、アドゥリス氏との間で交わした「いつか東京に行こう」という約束が、実現するとは」。
「今、私はここに立っている」。
とても感動を呼ぶ締め括りでした。
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