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食幹 (渋谷)(2ページ目)

「都内一のカウンターを作りたい」。料理長のそんな願いから始まった日本料理店は、寛ぎと活気が同居するモダンダイニング。若さゆえ勢いのある、かつ率直でありながらひねりのある逸品で愉しませてくれます。

執筆者:河野 優美

マリアージュの遊び心が創り出すここならではのオリジナル。

食幹
今回いただいた唯一のディナーコース(6,500円)の中でも、前頁の「お野菜の造り トマト味噌」同様、特に気に入ったのが「野菜盛り」。

これはレンコン、長芋、クワイ、伏見とうがらしの唐揚げに、梅肉をトッピングした蒸し百合根、ブルーベリーとフランボワーズの白和えを添えたもの。

食幹
この日のお通し・生牡蠣。
野菜は見たままというか、「こんな味だろうな」と期待していた通りでしたが、白和えは美味しいに新鮮さがプラスされ、とても心に留まりました。味わいは、フレッシュなヨーグルトのよう。食事の域を超えない甘みが、程よく舌に残ります。

果物とお豆腐がこんなに合うとは。柿や洋梨も相性がいいと言うから、ビックリです。トマトと味噌もそうですが、マリアージュの遊び心が、ここだけのオリジナルを創り出しているのは間違いありません。

食材の大ぶりな切り口が料理の印象を強くする。

食幹
蒸し物は、「金目鯛の酒蒸し」。大きめに切った下仁田ネギが存在感を放ちます。

食幹
白子がやわらかく口の中で溶けるお吸物。
どのお料理も運ばれてきた瞬間の印象が強いのは、きっとこの大ぶりな切り口によるもの。“食材の見た目を崩さない”という料理長のモットーが生きる瞬間のひとつです。

金目鯛は身離れが良く、とてもやわらか。素材の味が充分楽しめるよう、全体的に薄味に仕上げてあります。

器も美しく、聞けばすべて有田焼とのこと。料理長が有田の窯元まで出向き、食材を吟味するその目で選んできた品です。「ゲストが触れるものは、すべて質が高くなければいけない」。これも料理長のおもてなしの信条と言えます。

誰もが知っている食材をここならではの一品に昇華。

食幹
焼き物は、「ブリの塩焼き」。切り身がかなり分厚く、見るからに食べ応えがあります。

口の中でまずたまり醤油の味がして、その後、ブリ本来の味に移行してゆくのが、たまらなく美味しいです。また、大根おろしと卵黄を合わせた黄身おろしが、さらに味わいをふくよかに、飽きさせなくします。

食幹
この日のお刺身は、ネジマグロ・穴子・スミイカ。
ここまでいただいて思ったのは、どれもわかりやすい美味しさだということ。誰もが知っている食材を、使い方で変化させ、ここならではの一品に昇華させているのです。

わざわざ遠方から取り寄せる希少価値名な食材も魅力ですが、それがお値段を跳ね上げる要因になっては、美味しいと心から喜ぶ気持ちも半減してしまいます。

「こんな味」と想像できる身近な食材が、「こういう風にもなるのだ」と思えた瞬間、本当の食の愉しみに出会うような気もします。

次ページでは、シメの食事「ぱえりあ」とたっぷり3品のデザートをご紹介します!
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