平松のシェフの精神が生きる極上のホスピタリティー
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重厚な入口の中は、意外にもオープンマインドな雰囲気。 |
夕闇のエントランスに黒塗りの車が横付けされるのでも有名なレストランひらまつ(以下、ひらまつ)。広尾に店を構えて17年のフレンチの名店とあり、前日、洋服を選ぶところからとても緊張していたのですが、行ってみると思いの外、店内はやわらかい雰囲気。
まず最初に目を引いたのは、壁の絵の多さとそれを照らすライトの数々。それは、エントランスフロアに始まり、階段、廊下、ダイニング、化粧室と、ありとあらゆる壁に似たような静物画が続いています。
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レストラン ひらまつの外観。地下はシェフのお兄様の画廊。 |
それもそのはず、聞けば、平松シェフのお兄様(額賀加津巳さん)は画家とのこと。店内の絵は2枚を残し、あとはすべてお兄様の作品だとか。しかも、それはずっと変えられていないそう。気に入ったものを長く、シェフのこの精神がお店のホスピタリティーにも生かされているのでしょう。初めて入ったお店なのに、席に座ったとたん、緊張感がフッと和らぐのを感じました。
この平松兄弟、実は四兄弟で、平松シェフは三男。画家のお兄様は次男。長男は、画廊経営。そして、四男は、数学を教えているとのこと。
フォアグラのキャベツ包みは、20年来変わらないひらまつのスペシャリテ
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フォアグラソテーの間にトリュフスライスを挟み、それをキャベツで包んだ一品 |
そんな芸術に長けた男ばかりの環境で育ったひらまつシェフのお料理はと言うと、意外にも芸術性を重視していると言うより、温かみを全面に押し出したものでした。その中でも、フォアグラのキャベツ包み トリュフ風味のソース。これは、20年来のひらまつのスペシャリテ、それこそ、ひらまつの前身となった「ひらまつ亭」の頃から、ずっと作り続けているメニューだそうです。
これは、フォアグラソテーの間にトリュフスライスを挟み、それをキャベツで包んだ一品で、ソースはフォアグラをソテーした油と、25年物のシェリー酒・ビネーブルドゼルスと、鴨の煮汁、ちょっと甘いマデラ酒、トリュフジュースを煮詰めたもので仕上げたもの。食べてみたら、さすがにおいしい。舌に触れて少しのタイムラグをおいてから、口の中にじんわりフォアグラの甘さがひろがっていきました。
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理知的で気品あるひらまつシェフのお料理。 |
実はこのメニュー、頼んだコースの中には、残念ながら最初はなかったのです。でも、そんなに歴史のある一品と聞くと、やはりひらまつに来たからには食べずしては帰れない。わがままを承知でコース内の一品とのチェンジをお願いしたのです。アラカルトだと、6,500円のメニュー。1,500円増しになりましたが、快く応じて下さいました。その上、帰りの際には、チェンジ後のメニューでコースを打ち直したメニューカードまで下さいました。
そして、このスペシャリテ以外にも、ひらまつには長く大切にされているものがありました。
感動を誘う思い出の品と最上のデザートは、次ページにてご紹介します!