「素晴らしいポーカー・プレイヤーの多くは、もしビジネスの世界にいたら素晴らしいビジネスマンになっていたと思うよ。」
ドナルド・J・トランプ(アメリカの大富豪)
日々高度な判断を次々に下す立場にいる人々がゲームにおいても強いというのはよく聞く話です。
第33代アメリカ大統領ハリー・トールマンはポーカーの名手としても知られていました。現代の億万長者の代名詞、あのビル・ゲイツも学生時代にポーカーで作った資金で事業を立ち上げる種銭にしたのは有名な話です。
●ポーカーというゲーム
ポーカーには様々なルール・バリエーションがありますが、基本的には麻雀のようにスーツ(マーク)と数字を組み合わせ、手札5枚のカードの役を競うゲームです。
最初の配札で役が成立する確率は最も低い役の1ペアでもわずか1/2。次のランクの2ペアでは1/20、最高役であるロイヤルストレートフラッシュ(同一スーツでA、K、Q、J、10)などは数万分の一です。
最初に配られた手札が大きなウェイトであるのは間違いありません。一見すると運任せのゲームに思われますがプロは技巧のゲームであると言い切ります。一体何故でしょう?
●心まで見抜く鋭い洞察力
プロともなれば凄まじい洞察力を持っています。相手のほんのわずか仕草や表情から癖を読み取り、手札によって相手がどう変化するかをたちまちに見抜いてしまいます。
素人がトッププロとまかり間違って対戦すれば自分の手をさらして勝負しているに等しく勝てる見込みはまずありません。欧米の大会では自分の表情を読まれないためにサングラスするプレイヤーも見かけるくらいです。
●イカサマ・テクニックに関する知識
テクニックとイカサマは双子の兄弟といわれます。皆さんも一度はカードマジックをご覧になったことがあるでしょう。マジシャンの手に掛かれば好きなカードを好きなときに配ったりとカードコントロールは思いのままです。あのテクニックがギャンブルに使われたら… 一流プレイヤーはマジシャンも顔負けの豊富な知識を持っています。
しかし誤解しないでください。強い人はイカサマを使う人であるという意味ではありません。ただイカサマ・テクニックに通じていなくては敵がそれを使ったときに見抜くことが出来ません。カードテクニックに関する知識は身を守るためにも必須のものなのです。
●ポーカープレイヤー最強の武器「ブラフ」
またブラフと呼ばれる心理的駆け引きは必要欠くべかざる強力な武器です。ポーカーの流れは大まかに云うと次のようになります。
1.カードディール(カードを配る)
2.ベッティングラウンド(チップを賭ける)
3.ショーダウン(手札の公開)
(ポーカーの種類によって1.や2.の間にカードチェンジがあったり1.と2.を繰り返す場合もあります。)
さてベッティングラウンドではチップのかけ方による駆け引きがあります。相手と同額のチップを賭けたり(コール)あるいはそれ以上のチップを上乗せしたり(レイズ)して場の賭金はどんどん上昇していきます。
ここからが心理戦です。例えば手札が低くてもすれっからしのプレイヤー達は意図的にレイズしたりします。すると相手は「強い役なのかもしれない」と疑心が生じゲームを降りる場合があります。ゲームによってはレイズで相手を振るい落としショーダウン前に勝負がついてしまうこともあります。
強気にでるだけがブラフではありません。逆に自分の手が弱いと思い込ませ、相手に思う存分レイズさせて最後に仕留めたりする場合もあります。
相手の心を迷わせ敵の高い手をつぶしてしまったり、クズ手でも黄金に変えてしまう…このような心理的威圧・詐術こそブラフなのです。
●ポーカーで最も大切なもの「鰐の血」
洞察力、テクニック、ブラフ。しかしこれらにも増して最重要なのはセルフコントロール、すなわち自己抑制なのです。
一流プレイヤーでも毎回勝てるわけではありません。彼らとて不運に見舞われれば、時には破産寸前の大敗を期すこともあるのです。しかしこの最悪の状況でこそ人間の胆力や底力が試されるときです。
ギャンブルや事業においては失敗して冷静さを失い、そして負けを取り返す為にさらに大きく勝負にでて惨敗を重ねるというケースは呆れるほど良く聞きます。理屈では分っていても敗北は人の判断を狂わせ冷静さを失われます。自己抑制がなければ他の資質がどんなにすぐれていようと無に帰します。
圧倒的プレッシャーの下においても恐れず、日和らず、冷静さを失わないプレイヤーを賞賛してAlligator blood (鰐の血)と呼びますがこれこそ自己抑制の賜物。逆に誰もがわかっていながらなかなか出来ないこそ、このような尊称が生まれたのかもしれません。
ポーカーとは別世界ですが、やはり厳しい勝負に身を置くある一流棋士もこんなことを述べています。
「良い場面が続くと油断につながるものですし、悪い局面から逃げ出しても決してよい結果にはつながりません。ですから、対局中はできるだけ感情の波を小さくおさえるように努力しています。」
羽生善治
紹介してきた技術はどれも一朝一夕に身に付けられるものではありませんが、少なくとも「自己抑制」だけならたった今からでも心がけることはできるはずです。
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