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Suda51氏の名言に、ゲーム業界の未来を見る(2ページ目)

つねに挑戦的なゲームを生み出し、世界的に高い評価を得ているゲーム作家・須田剛一(Suda51)氏。須田氏の発言から、これからのゲーム業界の「あるべき姿」を考えてみましょう。

執筆者:川島 圭太

ゲームは「作品」か、「商品」か

花と太陽と雨と
-終わらない楽園-

(ニンテンドーDS)

つねに新しい挑戦を続けていきたい、という須田氏の姿勢は、2007年12月には『ノーモア★ヒーローズ』(Wii)で、2008年3月には『花と太陽と雨と -終わらない楽園-』(DS)で結実しています。どちらも須田氏の比類なき「作家性」に満ちあふれた内容で、とくに『ノーモア★ヒーローズ』は北米で発売されるとたちまち絶賛されました。

いま、あえて「作家性」という言葉を使いました。これもまた、昨今のゲーム業界においてはレアになっている言葉です。前のページにおいて、人気シリーズのリメイクや続編ものばかりが目立っている現状は「保守的」だと書きましたが、その一方で、ゲームのパブリッシャーは企業として利益を上げなくてはならないので、続編やリメイクなどの「売れるゲーム」に注力する姿勢そのものは、一概に間違いとは言えません。

ここで考えてみたいのは、ゲームは「作品」であるべきか、「商品」であるべきか、という問いかけです。これについて、須田氏はGDCでこのように語っていました。

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須田氏:
ディレクターには「職業監督」と「作家監督」の2種類があると思っています。職業監督は、世の中に売れるもの、クライアントやパブリッシャーからのオーダーに対して忠実に物が作れる人たちのことを指します。作家監督は、新しいものを発想して、新しいことを世の中に定義していく。そして新しいことを喜んでもらう。ただぼくは、すべてのゲームディレクターは「職業監督」であるべきだというふうに考えているんですね。(引用元:GAME Watch - 2007年3月10日

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「作家性」にあふれる須田氏の言葉としては、ちょっと意外に思われるかもしれません。ただし、他人の意見をそのままなぞって作るのは、ある意味で非常に楽な行為でもあるため、職業監督に徹しながらも作家監督の志を忘れてはいけない、と氏は強調していました。プロとしてゲームを作っている以上、それは「商品」として売れるモノでなくてはならないが、それと同時に、「作品」としての個性も追い求めなければならない、というわけです。

そう言われてみれば、日本で大人気になっているシリーズ作品の多くは、続編ものでありつつも「作品」としてクリエイターの個性も出ていることが人気の一因になっていますよね。日本でRPGの人気を不動のものにした『ドラゴンクエスト』シリーズ独特の演出や台詞回しは、堀井雄二氏のセンスがいかんなく発揮されていますし、『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』シリーズの一貫した“触れて楽しい”というゲームデザインも、インタラクティブ性を重視する任天堂の宮本茂氏ならではのセンスを感じさせます。

宮本氏に対しては、須田氏もかねてから敬意を払っており、「万人向け」のソフトラインナップを得意とする任天堂が手を出さないと思われる「パンク」な作品を、同社のハードに提供することに使命感を抱いているとのことです(参照:Wikipedia - 須田剛一)。須田氏は、クリエイターとして「万人向け」のゲームを作ることを目標としていますが、これはけっして、クリエイターとしての個性を失くしていくという意味ではないでしょう。「万人向け」と「パンク」の架け橋となるようなゲームを作りたい、という須田氏の意気込みを、わたくしは感じます。

最後に、ゲーム業界の「これから」を見据える須田氏の、印象的な発言をふたつ引用します。

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須田氏:
今、ゲーム業界は、産業として成熟しきって、これからの土台を作る時期なのではないでしょうか。映画産業が、世界の各地域で互いに影響を受けながら発達してきたように、ゲームも地域ごとに特色が出していけたらいいと考えています。最近の日本では、DSやWiiは、高機能化とは別の道でゲームの可能性を提示した、非常にパンクで魅力的なハードだと思います。(引用元:電撃オンライン - 2007年12月7日

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須田氏:
僕は小説、映画、コミック……と、いろいろな娯楽がある中で、ゲームは極上のエンターテイメントだと考えています。ゲームだからこそ、文章、音楽、映像など、多くの要素を乗せることができるんですよ。これを意識し、リミッターを設けずにやりたいことをやろうと思っています。(引用元:同上)

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これからも、いちゲームファンとして、須田氏のような志をもった若き「ゲーム作家」が増えてくれることを、大いに期待したい。


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