ノーモア★ヒーローズ
(Wii)

わたくしが敬愛しているゲーム作家のひとりに、須田剛一(Suda51)氏がいます。『ノーモア★ヒーローズ』や『花と太陽と雨と』など、生み出すゲームはつねに挑戦的で、世界的に高い評価を得ているゲーム作家です。ただし、わたくしが氏を敬愛する理由は、その作品の面白さだけではありません。そもそも「ゲーム作家」という肩書き自体がレアになっている感のある昨今のゲーム業界において、須田氏のゲーム作りに対する姿勢と哲学は、業界の未来を憂う者にとって非常にためになるし、共感できるからです。

当記事では、須田氏のこれまでの発言を振り返りながら、これからのゲーム業界の「あるべき姿」を考えてみることにしましょう。

ゲームのない生活はつまらない

須田氏のゲーム哲学を端的に表す言葉として、「Punk's Not Dead」(パンクは死なない)があります。「パンク」といえば、社会や政治へのアンチテーゼを込めた音楽ムーブメントを思い浮かべますが、本来は「既存のジャンルやスタイルに囚われない姿勢そのもの」を総称する言葉です。

最近のゲーム業界を見てみると、昔のゲームのリメイクや、人気シリーズの続編ものばかりが目立っていて、ゲームを作る側も遊ぶ側も「保守化」しているのではないか……こんな風にも感じられます。かつてのゲーム業界は、ファミコン時代を思い出してみると分かりやすいかと思いますが、新しいジャンルのゲームがどんどん登場していましたよね。あのころの状況を須田氏流に言うと「パンク精神にあふれていた」となるわけですが、最近のゲーム業界は、パンクには厳しい状況になっているのです。

そこで須田氏が訴えたのが、「レッツ・パンク」でした。2007年のGDC(世界最大のゲーム開発者会議)における、氏の発言を引用してみます。

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須田氏:
最近はアメリカやヨーロッパから、優秀で新しくて面白いものがたくさんでてきます。残念ながら今の日本には、新しいゲームが出る土壌があまりないんですね。

それはなぜかというと、決してパンクがいなくなったわけではなくて、新しいゲームを作る環境ができないし、そもそも“ない”というのがあります。日本のマーケットがどんどん小さくなっているという現状もあります。新しいゲームを生むには「マーケットがない」ということで、ぼくらはチャレンジできない、というのがあります。

したがって、ぼくらは世界に向けてゲームを作ることで、みなさんに新しいゲームを提供できる。それはなぜかというと、マーケットが大きいからですね。これからも新しいゲームを作り続けていきたい。それをパンクと呼んでいます。(引用元:GAME Watch - 2007年3月10日

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……そして須田氏は、「No Game, No Life」(ゲームのない生活はつまらない)という言葉とともにGDCの講演を締めくくりました。日本のゲーム市場は成熟し、保守的になっているが、これを解体して次のステップに進まなくてはゲーム市場の未来はない。これからは、日本だけでなく世界で通用するゲームを作ることがいっそう求められる。これが、須田氏の考える「レッツ・パンク」なのです。

ゲームは「作品」か、「商品」か