ちょうど昨年の今ごろ、3社の次世代ゲーム機に関する記事を書かせていただきましたが、おかげさまでゲームチャネルの年間アクセスランキング1位!になりました。ありがとうございます。てなわけで今年も、先日アメリカで開催された世界最大のゲームショウ「E3」で明らかになったゲーム機メーカー3社の戦略や、それぞれの次世代機の魅力について整理してみることにしましょう。
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マイクロソフトの最新ゲーム機「Xbox 360」は、昨年末に発売されて以来、日本では現時点までに20万台程度の売り上げにとどまっていますが、米国ではしばらく品薄状態が続いているほどの人気ぶり。来月中には全世界の累計出荷台数が500万台を突破しそうな勢いです。
日本では、国民的に好まれているジャンルといえば『ドラゴンクエスト』などのロールプレイングゲーム(RPG)ですが、米国においては一人称視点シューティング(FPS)やスポーツゲームが好まれる傾向にあります。米国のゲームファンにとっては魅力あるソフトが揃っているXbox 360ですが、RPGなど日本人好みのジャンルも充実させることが今後の課題でしょう。『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親・坂口博信氏が手がける『ブルードラゴン』や『ロストオデッセイ』など、日本でのヒットが期待されるRPGの発売が楽しみです。
ちなみに、次世代DVD規格のひとつであるHD DVDを再生できるXbox 360用の周辺機器を今年1月に発表し、さらに「E3」ではXbox 360とウィンドウズVistaとの連携を強調していたマイクロソフト。Xbox 360を単なる高性能ゲーム機ではなく、パソコンやテレビ、ビデオ・音楽プレーヤーなどのデジタル家電の中核として普及させようとしている同社の戦略が垣間見えます。
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デジタル家電の中核を狙う……という点では、マイクロソフトとソニーの戦略は真っ向から衝突することになります。ソニー陣営の次世代機「プレイステーション3(PS3)」に搭載されている「Cell」は、米IBMや東芝と共同開発した新プロセッサ。複数のOS(オペレーティングシステム)の同時実行が可能で、ゲーム機やデジタル家電、パソコン用のOSとの連動も視野に入れているようです。また、次世代DVDであるブルーレイディスクをPS3で再生できることも既に発表されています。
ただしマイクロソフトは、「Xbox 360」と「ウィンドウズPC」と「(ウィンドウズ モバイルを搭載した)携帯機器」という3つのハードにおいて、相互的かつシームレスなゲームプレイ環境を実現するネットワーク・コミュニティ“Live Anywhere”を発表しています。要するに、3つのハードがデジタル家電の中核を担う、という構想です。
対するソニーは、PS3を「何でもできる汎用コンピュータ」と位置づけ、PS3さえあればデジタル家電の中核を担える、という魅力を打ち出そうとしているようです。マイクロソフトとしては「Xbox 360」を汎用コンピュータと位置づけることは得策ではないので(ウィンドウズPCビジネスと競合してしまうので)、ここにPS3とXbox 360との決定的な違いが生じることになりそうです。
そして「E3」が開催されたタイミングで、ソニーはついにPS3の発売日と値段を発表しました。発売日は2006年11月11日、ハードディスク 20GBモデルの値段は「税込¥62,790」で、ハードディスク 60GBモデルは「オープン価格」。ちなみに米国では、前者は499ドル、後者は599ドルで発売する予定とのことで、日本でのハードディスク 60GBモデルの市場価格は7万数千円前後になると予想できます。
つい先日、PS3の値段について某ゲーム専門誌の方たちと雑談する機会があったのですが、皆さん口をそろえて「高すぎ!」と仰っていました。ゲーム専門誌の方ですら高いと思うのなら、一般の消費者にとっては相当に高いという印象なのでしょうか。交流のあるビジネス誌の方にも印象を聞いてみましたが、やはり皆さん「高すぎ!」とおっしゃる。
……まあ、『ファイナルファンタジー13』級のキラータイトルがやや乏しかったり、Cell構想の全貌がまだまだ消費者に伝わっていない現時点での「魅力」と「値段」とを天秤にかけては、PS3は高すぎる!と感じてしまう消費者が多いのは仕方ないのかもしれません。ゲーム機としてはもちろん、デジタル家電の中核としての魅力をわかりやすく消費者に提示できるかどうかが今後の課題です。
次ページからは任天堂の次世代機「Wii」を解説。ライバルとされるマイクロソフトやソニーの首脳も、「Wii」とは共存できると思っているようだ!