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勇者の時代から群像の時代へ(2ページ目)

1人のプレイヤーが、用意された世界の中で唯一の主人公になるゲームから、新しいゲームへと時代が少しずつ流れています。多くのプレイヤーが主人公になる群像の時代へ。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド


総表現者化現象

ニコニコ動画の図
ニコニコ動画は動画を作る人も、それを見る人も表現ができる、まさしく全ての人が表現者になれるツールですね
開発者がエンターテイメントを用意し、ユーザーがその中で主人公になるという構造がどう変わるか、これを説明する前に、ちょっとゲームから離れてお話をする必要があります。それは、表現、あるいはクリエイティブというものが、今まで一部のプロフェッショナルの人間のものであったのが、多くのシロウトの手に降りてきた、というお話です。

人が表現活動をする為に最低限必要なものが、2つあります。表現の手段と、表現の場所です。今まで表現の手段はプロの高度な技術であり、表現の場所は、テレビや雑誌というメディアであり、普通の人にはなかなか手が届かないものでした。

PCが普及し、インターネットが一般的になると、表現の手段と、場所が、いっぺんに一般大衆の手に届きます。手軽なところで言えば、ブログ、掲示板。あるいは動画配信サイトなどでも、自ら映像を作って自由に表現をしだす人が出現します。

そうすると、驚くことがおきました。今まで一部の才能ある人の特権だと思ったクリエイティブが、たくさんの人に開放されると、企業がビジネスで創りあげるにはとても不可能であるような膨大かつ奇想天外なコンテンツが生み出されたのです。

例えば、YouTubeやニコニコ動画に大量に投稿される膨大な動画であったり、2chのスレから生まれた電車男のような1人の人間では書くことのできない物語であったりです。

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クリエイターは、ユーザーと競うのか、ユーザーと創るのか

みんなが主人公の図
たくさんのプレイヤーみんなが主人公となり、みんなが面白さを提案でき、みんなで楽しむ、それが群像の時代です。
これは、娯楽という大きな枠で捉えると、ゲーム業界にとって非常に重要な出来事です。なにしろ、今までプロの領域であった表現活動にかつてないほど多くのアマチュアが参加し、なおかつ膨大で面白いコンテンツが生み出され、インターネットを通じて無料で公開されてしまうのですから。

この時、2つの選択肢があるはずです。プロのアイデア、技術、資金力をもって遥かに高品質な作品を提供する。これは、今までの勇者時代の路線ですね。そしてもうひとつ。ユーザーが作るコンテンツをゲームの中に取り込むことで、その大きな創造の力を味方につけるという方法です。

今後、どんどんITの技術は発達し、表現の敷居が下がっていくことを予想すれば、ユーザーが作るコンテンツをゲームに取り入れていく方が、正解なのではないかと、私は考えています。つまり、ゲーム開発者が1から10まで用意した世界の中で1人のプレイヤーが主人公になる勇者の時代から、多くのプレイヤー達が自ら表現をし、それをみんなで共有する群像の時代へと変化するというわけです。冒頭にお話した、主人公になるのはプレイヤーではなく、プレイヤー達、というのはそういう意味です。

この群像の時代がくると、ゲーム業界はどうなるのでしょうか。
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