さて、このゲーム。ファンアイテムとしては及第点と言えるでしょう。原作の味をうまく生かし、錬金術やアルフォンスなどの要素を積極的にゲームに取り入れている点はファンにうれしい限りです。アニメも多いですし。ファンとしては会話シーンに音声が当てられていると嬉しかったです。
ゲーム自体は物語の展開を楽しむためのもので、ステージをクリアした後にご褒美としてアニメーションを観ることができるという感じになっています。
内容もそれほど難しいものではなく、攻撃ボタンを押すだけでも楽しめますし、攻撃の合間に錬金術で棘を練成してコンボを繋げるという要素もあってやりがいがあります。コンボの最後の一撃をタイミングよく出すとエドワードが一瞬光り、威力の高い攻撃を出せるというのも慣れると気持ちがいいものです。
ただ、単体のゲームとして見たときに小さい点でいくつか思うことがありました。たとえば■攻撃がやや単調で作業になりがちなこと。
マップ上に落ちているいろいろなものから武器や兵器を練成して活用する、という内容のためか基本的な戦術がやや単調に感じました。周囲の状況がわかりにくく、大砲を操作している最中に敵の錬金術師の飛び道具でやられる、練成中に襲われる、といった場面もしばしば。
またキャラクターゲームにありがちな点として■やや世界観を壊しがちな展開があるということ。
合成獣(錬金術師が複数の動物から練成する獣)がメインの敵なのはよいと思うんですが、街中でワラワラと出てくる人間たちに異様な違和感を覚えました。同じ顔をした人間たちが倒しても倒してもワラワラと出てくるあたりは「ここはラクーンシティか」と突っ込みたくなりました。(著者注:ラクーンシティ=バイオハザードの舞台。ゾンビがワラワラと出てきますよ)
操作性もよく、システムも練られていてゲーム初心者でも楽しめるゲームです。原作も軽妙さと重厚さがバランスよく配分されていてお勧めなので、ゲームで始めるもよし、原作から読むもよし、まずは放映中のアニメを見るのもよいでしょう。
余談ですが、エドワード・エルリックという名前を読んでファンタジーの名作『エルリック・サーガ』シリーズを思い出しました。シリーズ中一番有名な『ストームブリンガー』の名を知る人もいるのではないでしょうか。こちらはなかなかダークな展開が魅力の洋書となっています。SFや現代モノに飽きたらこちらもお勧めですよ!
鋼の錬金術師
発売日:2003年12月25日
価格:6,800円
スクウェアエニックス