■加藤が体験した心霊現象とは!?その日は僕の彼女と僕の友人(K:男)、彼女の友人(Y子:女)との4人でテレビを見ていました。場所は名古屋市熱田区、このあたりはかの伊勢湾台風の被害が及んだ場所です。当時は陰陽師安倍晴明が流行していた頃。僕たちは「現代の陰陽師」が悪霊を退治する、という内容のテレビを見ていました。スタジオには霊障に悩む人々が集められ、高名な陰陽師が登場します。陰陽師は式神や経を駆使して彼らの中に潜む悪霊を追い立て、退治していました。「こういうのって、テレビ越しでも入っちゃったりするんだよね」僕の彼女がボソリと呟いたのは何かの予感があったのでしょうか。僕たち4人の中で彼女だけがいわゆる霊感が強く、僕らには見えないものが見えてしまう人だったのです。4人はしばらく食い入るようにテレビを見ていましたが、僕は目の前で床に座る彼女の様子がおかしいことに気が付きました。テレビから目を離さずに、そのままの姿勢ですすり泣いているんです。実はこういったことは初めてではありませんでした。僕自身に心霊体験はないのですが、彼女のこういった状況に遭遇することは度々ありました。が、他の友人たちは初めての体験に戸惑うばかり。彼女は泣きながらブルブル震え、「寒い、寒い」と呟き始めました。「足のほうから水が来る」「男の人だ…!」「この人、溺れて死んだ人だ!」僕は彼女のこういった言動に半信半疑ながら、あわてて台所に走りました。こういった事態に塩と酒が効果を及ぼすことを学んでいたからです。塩を彼女にかけ、一掴み口の中に入れました。彼女は必死で首を横に振って抵抗します。「やめろ!」今までとは打って変わった口調で僕を睨みつける姿を見て、背中に冷たいものが走りました。友人2人がかりで彼女を押さえつけ、塩と酒をのませると彼女は少し落ち着きを取り戻しました。Y子が心配そうな顔で彼女の顔を見ていました。「どこかで溺れて死んだ人がのりうつったって事?」「うん。多分そうだと思う…ひどい泥みたいな匂いがする」Y子は眉をひそめ、哀れむような表情を見せました。その瞬間、彼女は言いました。「駄目だよ、可愛そうだって思っちゃ駄目だよ」「絶対、駄目だからね」繰り返し繰り返しそう忠告するのには理由がありました。前のページへ123次のページへ