神楽坂通り、一方通行にまつわる都市伝説
「たつみや」さんの2000円の鰻重 |
というわけで、飯田橋側からメインストリートである神楽坂通りを行く。ちょうど坂をのぼっていくことになる。この神楽坂通りは、時間帯によって車の流れが違う。午前中は早稲田方面から飯田橋方向への一方通行で、午後はその逆である。都市伝説なのかもしれないが、この流れは、目白台に住んでいた田中角栄が、国会のある永田町へ通うために定められたといわれている。
かつては「山の手銀座」といわれた神楽坂
神楽坂は花街であった。毘沙門様の前あたりは、夜店がずらりと並び、夜でも昼間のように明るかったそうだ。今でいえば新宿の歌舞伎町というようなイメージなのかもしれない。大正12年の関東大震災のとき、神楽坂の被害は少なく、銀座のデパートなどが一時神楽坂に移転してきたことで、当時は「山の手銀座」とも呼ばれていた。飯田橋側から歩くと神楽坂通りの右側が花街であった。その歴史は古く江戸時代にさかのぼることができる。今でも「芸者新路(げいしゃしんみち)」という名前の通りがあるが、この新路(しんみち)というのは、明治時代にできた「新」なのだそうだ。江戸時代にはすでに花街として盛況だった歴史を感じさせるネーミングである。このあたりは料亭などがあり、風情のある大人の街といった感じで、石畳も実にいい。
本題の鰻屋に行ってみる
神楽坂通りから脇にそれる横丁にはユニークな名前が多い。「かくれんぼ横丁」「見かえり横丁」などがある。そんな横丁のひとつ「本多横丁」を曲がろう。そこに目的地である「たつみや」がある。神楽坂というと、高級なお店が多いというイメージだろう。しかも、鰻。さらにジョン・レノン、岡本太郎、井伏鱒二、荒木経惟といった著名人が通ったとなると、どんだけ高級店かと思うと、なんとも庶民的な外観である。
店内は古いけれど清潔な感じである。荒木経惟の写真が壁に貼ってあるが、そういった有名人が来る店として宣伝しているわけでもなく、ごく普通の街の鰻屋さんである。値段も一番高い鰻重が2500円。安いのは1600円。ちょっと贅沢をして2000円の鰻重を注文。上品な女将さんが注文を取り、待つこと30分。出てきた鰻重は、実にうまかった。柔らかい鰻だが、表面はきっちり焼かれていて香ばしい。ここに通った著名人の名前を思い浮かべながらいっきにかき込むと、味が一層増した気がする。
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