散歩/グルメ・行列・銭湯の散歩ルート

「夫婦善哉」を読みながら大阪食い倒れ散歩(2ページ目)

小説家織田作之助の作品には大阪の町や店の名前が多く登場する。とくに『夫婦善哉』はガイドマップさながら実在の店が出てくる。今回はそんな小説の舞台を歩いてみた。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド


筋と通りの大阪

南北に走る「筋」、東西を結ぶ通り
大阪の町というのは、南北に「筋」と呼ばれる幹線道路が通っている。すなわち「谷町筋」「堺筋」「天神橋筋」「御堂筋」「四ツ橋筋」といった具合である。それにたいして、東西に延びる道を「通り」と呼ぶ。「土佐堀通り」「本町通り」「中央大通り」「長堀通り」「千日前通り」である。筋を歩いていると、いくつもの通りと交差する。同じく通りを歩くと筋を越えて行くことになる。実に合理的と思いきや、東西に走る道を筋と呼んでいるところもあり、あいまいな部分もあって、これこそ大阪なのだと実感させられる。


いよいよ難波の交差点

大阪新歌舞伎座が見えてきた。難波の交差点だ
僕が大阪にいたのは1978年~1982年であった。昭和の終わり頃である。千日前には、火事で焼けた千日デパートがまだそのまま残っていた。ちょうどその前にあったのが、自由軒という洋食屋で僕はよくここへ行ったものだ。
自由軒は『夫婦善哉』にも登場する老舗洋食店である。実は今回、『夫婦善哉』を読んでいて、僕自身、大きな勘違いをしていたことに気がつき、ぜひ再び訪れてみたいと思ったのが、今回の散歩の動機である。さあ、自由軒へ行こう。

自由軒には長蛇の列!

これが自由軒だ。しかし、店の前には長い列が!
1972年に焼けた千日デパートは、僕が大阪にいる間はそのままになっており、その後「プランタンなんば」に建て替えられ、今はビックカメラになっている。
その前にあるのが自由軒である。
『夫婦善哉』の中で自由軒のカレーについて、織田作之助は柳吉にこう語らせている。
「自由軒のラ、ラ、ライスカレーはご飯にあんじょうま、ま、ま、まむしてあるよって、うまい」とあった。実は、大阪にいる間、あるいはその後も大阪を訪れる度に自由軒にはきていたが、名物カレーを食べたことはなかった。ハンバーグや海老フライなどを食べていたのである。これも実にうまいのである。食べなかった理由はカレーに生玉子が苦手だったというのと、さらに壁にかかった「まぜない」という文字。この生玉子を混ぜてはいけないのかという思いがあった。さらにいえば、この名物カレーはドライカレーであると思い込んでいたのだ。
しかし、『夫婦善哉』を読んでみると、それらすべてがカン違いであることに気がついた。それを確かめたい。そう思うと居ても立ってもいられず、大阪まできてしまったのだ。

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