永井荷風が通った雷門通りの「尾張屋」
ちょうど店を開けたばかりの「尾張屋」さん。 |
前回の散歩の際にオールアバウトのプロデューサーのEくんが聞いてきた。
たしか、浅草にスマートボールの店があるはずだけど。。。
Eくんにそう答えたら、散歩のあとでさっそくネットでさがしてきてくれた。
Eくんがくれたメールには体調不良で今回は同行はできないと言う。
せっかくなら僕がスマートボールをしている写真を撮ってもらいたい。
それならと、以前何度か散歩につきあってもらっている東山さんと散歩に出かけることにした。
浅草駅のすぐそばにある松屋デパートの前に11時に待ち合わせた。
東山さんは、今年40歳になった男性で、数年前大手の会社をやめて独立。
いまはIT関係の仕事をやっていて、時間はけっこう自由になる。一般のサラリーマンの方にすれば、かなり贅沢な時間の使い方をしている人だ。
久しぶりに会った東山さんは日焼けしていた。なんでも最近はサイクリングに熱中していて、あちらこちらを自転車で走り回っているのだそうだ。
さっそく浅草の街をぶらつきながら、お昼ご飯を食べるところを探した。
「昔、オヤジに連れられてよくきたんですよ、浅草」
と言う東山さん。
「あそこの店はオヤジがここのはうまいって言ってたんですが、僕はあまりおいしいと思いませんでしたね」
というような話ばかりでなかなか店が決まらない。しかし、わかるような気がするなぁ。昔と今では味覚が変わっていたりするし。東山さんの父親の世代にはおいしいと思った味でも子供にとっては違っていたりする。しかし、そういう東山さんの父親世代が愛する味がまだ残っているのが浅草でもある。
うなぎを食べようか、天丼にしようかなどと言いながら、雷門通りまできたところで、ちょうど「尾張屋」さんが店をあけているところだった。
「あ、ここは永井荷風がかよった店ですか?」
と暖簾を出している女性に聞くと、そうですとのこと。後ろから東山さんが、
「じゃ、ここにしましょう」
ということで中に入った。我々が口開けの客である。
荷風さんお気に入りの「かしわ南ばん」
いつも同じものを注文した荷風。それは「かしわ南ばん」だった。そして、丼からはみ出るほどの海老が乗った天丼。 |
僕は、その永井荷風が毎回好んで食べたという「かしわ南ばん」、そして東山さんは天丼を注文した。
あとからどんどん客がやってきた。
人気のお店なのだろう。客層もさまざまならば、頼むメニューもいろいろだ。
「かしわ南ばん」がやってきた。正直さほどの期待はしていなかったのだが、驚いたことにこれが実にうまい。
身の締まった鶏肉に長ネギ、強い鰹だしのおつゆ。優しい食感の蕎麦。
何をとっても申し分のない味であった。きっと昔ながらなのだろう。
濃いおつゆもきっと変わらないのだ。
量はさほど多くない。この量も昔と同じなのだろう。
天丼には蓋がついているのだが、その蓋から海老の尻尾がはみ出ている。
ごま油のいい香りがしてくる。
「思ったほどしつこくないですよ」
と言いながら食べる東山さん。幸せな気分だ。
浅草六区娯楽街にスマートボールがない!
ランドマークともいえる「浅草花やしき」の乗り物。 |
たしか浅草六区娯楽街にあるはずなのだが、行ったり来たりと東山さんと探すもどこにもない。
僕自身、話には聞いていたけれど、どこにあるのかわからないのだ。
たぶん浅草ロックあたり、浅草演芸場の並び、つまり浅草六区娯楽街だと思うのだが、店さえないかんじ。うーん。どうしようか。Eくんに電話をしたりしながら、浅草を歩き回る。
「仕方ないので、隅田公園のほうへ行きましょう」
炎天下である。昼間の太陽にちょっと辟易した僕は、水辺へ行こうと東山さんに提案した。
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釣り堀に出会います!