これが「其中庵」だ!
坂を登っていくといきなり大きな看板が目に入ってきた。現在はけっこうきれいな庵になっている。裏が畑になっている。他に観光客はいなかった。実に静かだ。何も聞こえない。山頭火が7年間住み、句作に励んだ其中庵である。 |
案内板を見ると、この「其中庵」の意味が書かれていた。それによれば、山頭火の好きな言葉に妙法蓮華経法華経普門品《ふもんぽん》第二十五にある「其中一人作是提言《ごちゅういちにんさくぜしょうげん》」という一節がある。それはは、災難に遭ったとき、あるいは苦痛に苛まれたとき、その中の一人が「南無観世音菩薩」と唱えると観世音菩薩は、直ちに救いの手を差し伸べられて、皆を救われ、悩みから解き放たれるという意味である。ここから山頭火は「其中庵」という名をつけた。
室内はまるで山頭火が住んでいるかのようだ
外側をぐるりと見て、おそるおそる戸を開けてみた。誰もいない。が、驚いたことに文机などがあった。そして、壁には法衣と笠がかかっている。いまにも奥の部屋から山頭火がひょいと出てきそうだ。これが「其中庵」の室内。まるで山頭火が住んでいるようだ。 |
きれいに掃除が行き届いている。実際は、昭和13年の10月にここを去るのだが、それはあまりにこの庵が老朽化してしまったからである。
いまはとてもきれいだ。きちんと管理されているのだろう。
しかし、今は誰もいない室内に座って物思いにふける。
が、ここで、他の観光客がやってきた。やはり僕と同世代の男性とその家族である。
訪問した人が書き込める帳面が置いてある。
散歩の果てに其中庵
と書き、自分の名前を記した。
そして、その上にある休憩所へと向かった。