目を寄せるトレーニングをする藤沼亜衣選手(昨年6月) |
世界団体の藤沼選手にあらわれた「成果」
この竹内さんが取り入れた眼球運動の「成果」(と言っていいと思う)が象徴的にあらわれたのが、1年前の世界卓球選手権ドーハ大会である。この大会で日本は中国をあと一歩まで追い詰めたのだが、この中国戦に初めて起用された藤沼亜衣選手が、シドニー五輪銀メダリストの李菊を破るという金星をあげた。
大会前までパッとしなかった藤沼選手がなぜに活躍できたのか。
いろいろな要因はあると思うのだけれど、「急変」した理由を考えていくと、どうも眼球運動にあったのではないかと思えてくるのだ。詳しくはこちらの記事を。
さて、1月下旬のある日、ある会合で、竹内さんと一緒になった。
世界選手権での藤沼選手の話を聞いてからというもの、「いつか、きちんとビジョン・トレーニングの取材をしたいですね」ということになっていたのだが、僕の怠慢により実現せずじまいだった。
そうしたら、そのテーブルに河村茉依選手がやってきた。
当時、東京富士大卓球部のキャプテンで、この4月から日本実業団リーグ加盟の日立化成にはいった選手である。
その席で、その2週間前に終わった全日本選手権の話になった。
河村選手の「あと一本」は目の問題!?
全日本での河村選手は、女子シングルスのランク決定戦で、前年度3位の小西杏選手と対戦した。実績十分の強豪選手を相手に、気合い十分の雄叫びで粘りこんだ河村選手は、セットカウント3-3で迎えた最終セット、7-9のビハインドから3点連取し、10-9と先にマッチポイントを奪った。
そして、チャンスボールがきた。しかし……。
「決定球を打てる、と本人が判断した瞬間、それまでまったく力まずに打てていたボールに対して、力みが出てしまいました。あの一本がとれなかったのは、たぶん目の問題が関係していると思います」
竹内さんはそんな話をした。
河村選手もランクを取れなかった原因を知りたがった。
「じゃあ、一度調べてみようか」となり、「そうですね」となった。
ちょうどいい機会だから、「その日に取材しますか」となり、日程の調整となった。
かくして、僕は新潟に行くことになった。
3月のある晴れた日、新潟駅に迎えにきてくださった竹内さんの車で向かったのは「視覚行動研究所」というところである。
この研究所に竹内さんの「ブレイン」とでもいうべき、日本屈指のビジョン・トレーニング研究家がいらっしゃるのである。
********連載*********
卓球に役立てたい眼球運動(2)