全日本で3位になるなど安定した成績を残した加山兵伍 |
成績安定の加山が外された理由とは?
今回の代表入りしてもおかしくない選手に、たとえば加山兵伍(グランプリ)がいる。全日本、ジャパントップ12とも3位、代表選考会2位。主要な3大会すべてで安定した成績を残した。世界ランキングも88位で日本男子の4番目。だが、彼は選ばれなかった。理由を考えてみると、彼の年齢しか思い当たらない。加山は36歳。ちなみに僕と同い年だ。その同年齢として感じることは、「向上」するための努力だけでよかった月日は過去のものとなり、新たに「維持」するための努力も必要になりつつあるということである。目指す分野にもよるが、スポーツの世界ならとりわけ、僕らの年齢からの伸びはほとんど期待できない。巧くなるのは、持っているものの精度を高め、それをいかに効率的に、かつ効果的に使うかという術だけだといってもいい。
そんなことは加山だって感じているはずだ。それでも加山は、祖国で開かれる世界選手権を「最後の」晴れ舞台にしたいと思って賭けてきたのではないかと思う。
つけ加えるなら、加山がその実力をアピールできる機会は少ない。彼が昨年1年間で「出させてもらった」プロツアーは、日本選手が大量にエントリーできるジャパンオープンのみ。彼が存在感を示せるのは、国内のトップクラスの選手と対戦するときくらいなのである。
彼は主要な3大会すべてで安定した成績を収めた。だが、彼は選ばれなかった……。
中堅・ベテランの努力が踏みにじるられる
もちろん、かりに加山が世界選手権に出たとしても惨敗する可能性はある。水谷のポテンシャルを考えれば、彼が世界選手権で「ブレイク」する可能性だってある。しかし、それは日常の地味な継続的な努力を否定する考え方である。勝負事の本来の基準は「実力・実績」である。それを軽視するということ、すなわち今回の加山の成績を無視するということは、ほかの中堅・ベテラン選手の努力を踏みにじることでもある。それが「深い目」で見たときに、日本の卓球界のためになるとは、僕には到底思えない。