身体の使い方を変えた効果か、ラリーの中で緩急をつけるプレーが際立っていた |
今大会、身体の使い方を変えてきた効果はどのくらいあったのか。大嶋コーチはこう語る。
「打ち方からすればさほどのボールではないように見えるけど、台に入ってから予想したより少し伸びる、少し回転量が多い。野球のピッチャーでいえば、初速と終速のスピードの落差が少ないという感じですね。だから相手は見た目以上にボールの重みを感じたのではないかと思います」
大転換に必要なもの
平野が取り組んできたのは、小手先だけの技術的改良ではなく、大きな転換である。このような大転換は、実行できそうでできないたぐいのものだ。とりわけ前回チャンピオンとなれば、守りの意識が顔をのぞかせても不思議はない。昨年の優勝会見で、平野は「自分には素質がない」と言ったが、大嶋コーチは「自分が変わろう、進化していこうという気持ちがすごい。これほどの選手はいなかった。それは素晴らしい才能だと思います」と語っている。
いまの自分を変えたい、進化したいという気持ちは誰しも持つものだろう。しかし、そこで直面するのが、じゃあ実際にどういうことをすればいいのか、という問題である。これはなかなかの難題だ。ただ、やみくもに練習時間を増やしたり、試合経験を積んだり、トレーニング内容を変えたりするだけでは、バーの高さを落とさずにその難題をクリアすることはできない。そこで必要となるのは何よりも努力の「方向性」を認識することだからである。
目標とする人間像がある
平野はよく「人間として成長したい」「こんな人間になりたい」という言葉を口にする。「選手」ではなく「人間」という言葉を選ぶのだ。そして、そう語っているときの彼女は生き生きとしてまぶしく見える。たぶん彼女の胸の内には「目標とする人間像」が確固として存在しているのだろう。だからあとはその方向感覚を信じて歩んでいけばいいわけだ。その地点にたどり着くために必要なら、根本的に卓球スタイルを転換することくらい何事でもない。彼女にはそんな芯の強さがあるように僕には思える。
この優勝で世界選手権上海大会のシングルス代表に内定した。「もっと身体の使い方のレベルを上げていきたい」と平野は言った。彼女はまだ転換の途上にいる。転換途上の2連覇。彼女がしっかりとした方向感覚を持ちつづけるかぎり、日本女子は平野を中心とした時代に入っていくのではないかという気がしている。
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