卓球/卓球関連情報

2005全日本卓球女子シングルス 平野早矢香「転換途上の2連覇」

平成16年度全日本卓球選手権大会の女子シングルスで、19歳の平野早矢香(ミキハウス)が2連覇を飾った。昨年3月の世界選手権後、目先の試合には目をつむり、じっくりと卓球スタイルを転換してきた成果が表れた。

執筆者:壁谷 卓

平野早矢香1
2年連続で皇后杯を手にした平野早矢香

大嶋コーチの「予言」

平野早矢香(ミキハウス)の好調さをしめすエピソードがある。

女子シングルスのベスト8が出揃った最終日前夜、平野は大嶋雅盛コーチから「ちょっと話でもしようか」と呼び出されたという。だが、大嶋コーチの口から出てくるのは翌日の試合とはあまり関係のない話ばかり。彼女が「試合の話はしなくていいんですか?」と聞いたところ、大嶋コーチはこう答えたという。
「うん。明日の3試合で落とすのは4セット以内だから、ええんとちゃうか」

大嶋コーチの「予言」は的中した。準々決勝の今福久美(淑徳大)に1セット、平野本人が「いちばん厳しかった」という準決勝の金沢咲希(日本生命)に2セットを奪われただけで、決勝の末益亜紗美(日本生命)には4-0のストレート勝ち。大会を通しても、落としたのは6試合で5セットという安定感で2連覇を達成した。

平野は大会の2、3週前からずっと調子が良かったという。これまでなら調子の波があり、いい状態もあれば悪い状態もやってくる。なのに、今回は調子が落ちていく感じがまったくない。
「なんで落ちないんですかね?」
不思議がる平野に、大嶋コーチはこう言った。
「調子がいいんじゃなくて、それが普通になったんとちゃうか」
地力がアップしたということなのだろう。大嶋コーチの予言の根拠がそこにある。

卓球スタイルを改造

昨年の初優勝は実力でつかんだという実感がなかった、と平野はいう。自分より実力のある人はいた。球運に恵まれた面もある。それでは世界のトップクラスには通用しない。時の運に左右されない地力をつける必要がある。

そんな自覚が芽生えてきたという平野は、大嶋コーチの指導のもと、昨年3月の世界選手権団体戦が終わってから、卓球スタイルの改造に取り組んだ。具体的には「身体の使い方」を変えていったという。平野はそれを「身体の中の力を出すようにするんです」と言った。

それを聞いて「ああ、あれがそうだったのか」と思い出したことがある。昨年の夏のことだ。平野は「仰向けに寝た状態から腹筋を使わずに上体を起こす」という動きをやって見せてくれた。

仰向けに寝そべる。「気」を集中するかのように息を整える。お腹のあたりが少しへこんだと思うと、そこを中心に頭と足先のほうに向かって身体の各部位が流れるように小さく動いていく。まるで海岸に打ち寄せた波が引いていくときのように。そして、力が身体の両端に伝わったとき、ふっと上体を起こすのだ。「朝起きるときとかにやるんです。まだ完璧じゃないんですけどね」と笑った。

身体の使い方とともに、プレーをより攻撃的なものにするため、ラケットを替え、いくつかのラバーを試した。
「11月のプロツアーまでは負けてもかまわない。それからの1ヵ月半でまとめていこう」という大嶋コーチのアドバイスを着実に実行してきた。その結果、「今回はやり残したことはない、やれる準備はできる限りやったという充実感がありました」という心境に至った。
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