その内容は、主として強化の土台となる組織づくりに関すること、柳本監督が求めたようなナショナルチームの活動をサポートする体制をつくることだった。
そのため、西村氏はこの3年間の監督経験から、いくつかの項目を立てて具体的に質問や提案をしていった。
たとえば、そのひとつが、強化本部、ナショナルチーム、選手の母体という三者の意見を調整するポジションとして「総監督を置くのはどうか」という提案だった。
代表選手の選考に批判がつきものなのは仕方ないとしても、その説明などに監督の労力が割かれて現場に集中できない、ときには批判に脅えて力を振るえない、という状況を改めなければ、世界で勝つことは難しいと考えてのことだろう。
だが、木村本部長からは「そういうのは……」という答えが返ってきただけで、「どうして必要だと思うのか?」という議論にはならなかったという。
議論を深めようとしない理事会、強化本部
西村氏は常々「Jリーグの百年構想と同じように、卓球にも百年の計が必要」と言っていた。誰がナショナルチームのスタッフになっても、存分に力を発揮できる体制を整えることが大事だと考えていた。
だから、西村氏とすれば、「総監督を置く」というのは強化の基盤を厚くするためのひとつの案であって、そうしなければ引き受けないという条件ではなかった。
大事なのは、日本が本気で世界で戦おうとするなら何が必要なのかを議論し、深めてゆくことだった。
だが、卓球ガイドとなって4年弱で僕が見聞きした限りでは、理事会にも強化本部にも、残念ながらその姿勢はあまり感じられない。
「人間関係」や「好き嫌い」が判断基準のファースト・プライオリティ(最優先事項)となっているという印象は拭えない。
というよりも、そのような関係性や立場を維持していくために、物事が決められていくことが多い、といっても決して的外れではない。
「4年間というスパンは長い。このままの状態で引き受けたら、どこかで爆発してしまうだろうと思った」
西村氏のつぶやきに、協会の要職にある方々がどれだけ耳を澄ませるのだろうか。
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