頭ではわかっていても実践が伴わない。その代表格が「適切な食事をとること」ではなかろうか。自分に必要な分のエネルギーを栄養バランスのとれた食事で補う。それだけのことが、ひどく難儀だ。家庭科の授業で習った「三大栄養素」なんぞは、カネが無ければ嫌みにしか聞こえないし、カネがあったらあったで、好物を目にした瞬間から頭の片隅に追いやられる。そもそも、いろんな栄養素を含んだメニューを用意するのがメンドウだし、かりに用意したとして、その料理が何キロカロリーになるのかもわからない。
それじゃ……ということで、食品成分表を食い入るように眺め、簡単なレシピの載った雑誌をくまなくチェックするようになったら、すでに単なる「オヤジ卓球」と化した私はこう思うはずだ。俺はいったい何のためにこんなことをしているのだ?
強くなりたいと願う選手や、成長過程にある若い世代ならともかく、卓球のある人生を楽しみたいと考える社会人愛好者にとって、食生活に厳格になるあまり、必要以上の労力を使い、精神的ストレスを溜め込んでしまったら元も子もない。好きな物を、食べたいだけ食べ、飲みたいだけ飲む。私はどちらかといえば、そのような「方針」に賛成するタイプの人間だ。
しかし、である。30代も半ばに差し掛かると、なかなか20代の頃と同じような具合にはいかない。昔のような食生活を続けていると、どことなく体調がすぐれないという日が多くなった。とりわけ「回復力」の遅さには愕然とさせられる。私はこうも考えるようになった。卓球ライフを長く快適に続けたいのであれば、やはり料理と同じように「加減」が大切なのだろう、と。大人になったのか? いや、なんのことはない、家庭科を習った頃に逆戻りしただけの話である。
そんなわけで、メチャクチャな食事になりかねない暑い季節を迎え、私は「夏の食事」のアドバイスを乞うため、高崎健康福祉大学の講師を務める木村典代(みちよ)先生を訪ねた。