「それはやはり母体の利益を優先したいということなんですか」
「そういうことです。ですから、ナショナルチームで選手選考すると、『この選手選んだら、なんでこの選手も選ばないんだ』と。試合にでていって結果悪かったら、『こんな選手、どうして選ぶのか』と。
たとえばITTF公認のオープン大会に、僕とソーレン・アレーンでジュニアの選手を連れていきました。世界のランキングの選手がでてきたときに、日本の選手はまだ若いですから、経験させるために連れていってますから、予選のトーナメントで負けます。そうすると大会終わるまで3日残ります。これから世界のトップが出てきます。
そのときにソーレン・アレーンは、トップクラスの選手の試合まえの練習に全部日本の選手を使ったわけです。毎日2時間以上、そういう選手と練習させたわけです。これが強化なんです。ソーレン・アレーンがやればできるわけです」
「コネクションがあるわけですね」
「ええ。だから、そういうことが強化として大事なんだということを、僕ら、もうほんとにたくさんの報告書を卓球協会にだしてるわけです。ところが、結果をみて『予選も通らない選手をどうして選考していくのか』と。これが優先されたわけです。
そのとき、そのときの結果で、ナショナルチームが4年間の計画通りやろうと思うことをことごとく攻撃されたんです。そういうのが溜まりに溜まって、『あの2人に任していたんではダメだ』という談合の社会、村社会で固まってしまったわけですよ」
選手をある程度絞込み、負けても、負けても使いつづけるという「太っ腹」な選手育成システムが、中国をはじめとする世界的な趨勢となっている。ましてや日本は、それまでの「その場しのぎ」のやり方では勝てなくなったからこそ、ソーレン・アレーンを呼び、高島氏に総監督就任を要請したのである。
「そのとき、強化本部長なり、協会側が『任せてみよう』とすぱっと言えないんですか」
「そう言えば終わりだったんです。ところが、理事会で決めておきながら、途中でその勢力に負けて、『もの申す』ほうにOKだしてしまったんです。だから、僕も真ん中にはいっていたために、ソーレンを守らないといけませんから、それをやっていたんですけれども、怪文書が流れてしまって……」
身に覚えのない「怪文書」が流布するという「事件」が、高島氏に決定的なダメージをあたえることになったのである。
練習会場から見える風景(16)
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