卓球/卓球関連情報

世界卓球選手権大阪大会ルポ 練習会場から見える風景(11)(3ページ目)

連載ルポルタージュの11回目。徹底的にレシーブからの展開を繰り返す孔令輝の練習から、私は調整の本質を教わった気がした。

執筆者:壁谷 卓

試合は孔のレシーブにはじまった。サムソノフのフォア投げ上げサービスを巧みなストップレシーブからのドライブ攻撃などで3点連取した。

機先を制したこのレシーブが、試合の流れを大きく支配することになった。サムソノフの得意とするフォア投げ上げサービスからの展開が、さっぱり有利にならないのだ。サービスのコースを変えたり、バックサービスに切り替えたりと試行錯誤をするのだが、得意のパターンを封じられたため、点差を一気に詰めたり、離したりということができない。

孔が2ゲーム連取し、サムソノフが1ゲーム奪い返した第4セット、孔の真骨頂があらわれる。17-18と1点リードされた場面、サムソノフのバックサービスがフォア前にきたところを、バックフリックでレシーブエースを奪い、18オールに追いつく。19オールからの局面でもフリックを決め、20-19とマッチポイントを迎えた。

サムソノフには出すサービスがないように思えた。どうにでもなれという感じで、フォア投げ上げサービスを孔のバック前へ。孔はためらうことなくバック面でストレートコースを狙ってフリック。しかし、ネットに引っかけるミスとなり、ジュースにもつれこんだ。

孔は勝負を焦った、と私は思った。しかし、次の局面に及んで、そのミスは、完璧に獲物を仕留めるための周到な伏線だったのではないか、と思わされることになる。サムソノフが最後に頼るのは、フォア投げ上げサービスしかなくなっていたからだ。

孔は21-20と2度目のマッチポイントを迎えた。サムソノフのサービスは、やはりフォア投げ上げサービスだった。

先ほどと同じような軌道を描いたボールは、呼び寄せられたように孔のバック前へ。すばやくネット際に身体を寄せた孔はバック面でストレートコースにフリック。スマッシュ並みに強く弾かれたボールはネットに引っかかることなく、サムソノフのフォアサイドのコートに弾んだ。大きく流れてゆく白球に、サムソノフは、追いつけなかった。
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