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『1976年のアントニオ猪木』を紐解く(5)(2ページ目)

『1976年のアントニオ猪木』著者・柳澤健さんへのロングインタビュー最終回は、昨年、遂に実現した柳澤さんによるアントニオ猪木のインタビューについて、その率直な気持ちを聞いた――。

執筆者:川頭 広卓

「だって相手はアントニオ猪木だよ」

――本を出版された時点では、(1976年のアントニオ猪木を題材としての)猪木さんへのインタビューは実現していませんでしたが、その後、Numberにて実現しましたね。柳澤さんにとって、このときの達成度、満足度というのは、どのようなものだったのでしょうか?

「聞きたいことは聞きましたけど、もちろん、答に対して100%満足ってことはないですよね。ただ、これは聞くことに意味があったからね。なんていったらいいのかな。アリ戦みたいなもの。闘うことに意義があった。

僕としては、聞きたいことは聞いたし、猪木さんは答えられる範囲で答えてくれた。それ以上は誰が聞いても無理だと思う。猪木さんには答えたくないものには答えない権利がある。だから、インタビューに応じてくれた猪木さんにはすごく感謝しています」

――おっしゃる通りです。

「大事なことは、猪木さんに踏み込んだ質問をすることなんです。プロレスメディアではできないでしょ? 猪木さんにリアルファイトを挑むなんて。

プロレスメディアは猪木さんのファンタジーを守ろうとしている。僕はプロレスメディアではないから守らない。それだけのこと。

猪木さんには、メディアをコントロールする恐ろしい力がある。百戦錬磨の相手に最初から勝ち目なんかない。玉砕するつもりだった」

――ただ、実際、インタビューでは、すごい答えてくれていますよね?

「受け取り方は、人それぞれでしょうけど、自分の感触としては一生懸命答えてくれたと思っていますよ。

あとはね・・・、すごい緊張した。

このインタビューを“柳澤の負け”っていう人もいるだろうし、“よく聞いた”って人もいるでしょう。どっちでもいいんです。聞くべきことは聞いたから。」

――誰のインタビューであっても、その人に聞き辛いことを聞く勇気は必要ですよね。ましてや、相手はアントニオ猪木。そして、業界の根幹。

「仕事上、インタビューは死ぬ程やってきた。ただ、ここまで緊張したことはなかった。こう逃げたら、こう聞くとか、質問の順番とか、編集者とすごいシミュレーションをした。

それは僕の考えている方向から、逃がさないようにしたかった。それでも結局は逃げられた。向こうの方が一枚も二枚も上だから。そんな相手に立ち向かうには何よりも勇気が必要だった。」

――話を伺うだけでも、緊張感が伝わってきます。

「だって相手はアントニオ猪木だよ」

Special Thanks To Kenichi Ito
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※文中イメージ写真(Number291号)は、文藝春秋/Number編集部の許可を得て掲載しております

『1976年のアントニオ猪木』書籍データ

『1976年のアントニオ猪木』

定価:1890円(税込)
ページ数:320ページ
判型:四六判上製カバー装
初版発行日:2007年3月15日
ISBNコ-ド:978-4-16-368960-9
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