PRIDEはなくなったかもしれないが、ファンは存在する

今全米のケーブルテレビの前に座るファンの財布のひもはそうそう軽くはない。格闘技イベントにとってケーブルテレビにおけるPPV購買数は、イベント会社の死命をほぼ一晩にして決定してしまう心電図的存在である。5万件を下回る購買数の場合、採算が取れない状態に陥るといわれているが、実際新興団体でこの数字をクリアするものはほとんどない。

“ハードルを超える”数字の打ち出せないイベントへの評価は、過酷で苛烈だ。PPV放映は打ち切られ、出資者たちは資金を撤収しはじめる。にわかにギャラの引き下げ交渉が始まり、カードの半分を地方の無名選手が埋めるようになる。こうなると末期症状だ。崩壊の腐臭が漂い始めると、“スター”たち我先に沈む舟から逃げ出す算段を始める。あれほど賑やかだったラインナップからは、綺羅星が一人消え、二人消え、居場所を定めない流れ星たちは、次の「黄金伝説」を求めてジプシーの旅に出る。(だが悲しいかな、彼ら自身はこうした放浪が、自分の光を失わせる消耗戦でしかないことに気づいていない。)

こうした末期症状を迎えると、豪華イベントは尾打ち羽枯らした惨めな姿を晒すことになる。経営陣がころころ変わり、最初に打ち上げられた壮大な企画“UFCをぶっ飛ばせ!”という威勢のいいキャッチフレーズはどこかに消え去る。ファンはあくびをして、ネットのページをそして最後はどこでイベントが行われたかすら曖昧なまま、誕生ケーキの上のろうそくの炎よりもはかなく消えていく。

昨年、日本でもPRIDEの消滅を受けて、その後継者になるべくDREAMと戦極という二大イベントが産声をあげたが、正直まだ潰れはしないものの、ファンの心を捉えたとはとても言い難い状況が続いている。

それでも懲りずに毎年のように新しい試みがなされるのはなぜだろう? 二匹目のドジョウを狙う山師が多いだけのことなのか? それとも、まだこの業界にはUFCだけでは満たされない何かがあるのか?

もしかしたら、その問いに初めて正面から答えてくれるかもしれないイベントが、この春スタートする。

「BERATULE」

スペイン語で“戦士”を意味する言葉だという。なぜスペイン語での命名となったかは、後に譲るとして、まず旗揚げの立役者を紹介しよう。

「PRIDEは無くなったかもしれないが、ファンはどこに行ってしまったわけでもない。まだずっとこのフィールドに居るのだ」と雄弁に語るのは、このイベントの実質的プランニングを一人で固めたクリス・サンフォード氏。彼はギルバート・メレンデス選手をスーパースターの一人に押し上げた敏腕マネージャーであり、元をたどればシーザー・グレイシー門下で柔術を学び、自らもMMA選手として戦った経験も持つ超ベテラン業界人。

すなわちこの業界の裏側を見続けてきた生き証人の一人でもある。

四月の旗揚げを前にした今年一月末、そのクリス氏は突然日本を訪れ、いくつかのキーとなるパートナーとメディア関係をあわただしく訪問した。今回、筆者はその行程のアレンジメントを手伝った関係で、BELLATORの世界戦略をじっくり聞く機会を得た。

これまでの多彩なビジネス経験を元に新しい地平を切り開こうとしている彼は、退潮ムード著しい2009年の格闘技界を“Change”させるキーマンとなるのではないかという予感を感じた。まずはそのビジョンを聞いてみていただきたい。

資産100億! ESPN放映のBELLATOR旗揚(2)に続く

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