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ニッカン「PRIDE消滅」記事の波紋(5)(2ページ目)

ついに一般スポーツ新聞までが「PRIDE消滅」を語りだした。ニッカン紙上に掲載された問題の記事を軸に、10月改編でも復活が無かったPRIDEの現状と周辺事情を検証。

執筆者:井田 英登

うしたデタラメな事例を見ても判る通り、昨年段階で榊原社長には、もうPRIDEを正常な形で復活させる気持ち無かったのだと断定して良いと思う。

江戸の古典落語に「らくだ」という話があるのをご存知だろうか?

フグの毒にあたって死んでしまった兄弟分の葬式を出す名目で、やくざものが長屋の大家さんや出入りの商人たちの所にその死体を抱えて出向き、「葬式の香典をもらえないなら、死体に踊りを踊らせて見せるぞ」と脅して、香典はもちろん、葬式用の酒や料理をせしめる…というくだりがある。

僕には今回の騒動が、そんな滑稽な落し話を地でいったストーリーのように思えてならない。

今後も、あの時期、誰がどんなことを考え暗躍したのかといったエピソードについては、いろいろと明るみに出てくるに違いない。そして、誰が死体に“かんかんのう”を踊らせるという馬鹿げた仕組みを思いついたのか、そして誰が本当のPRIDEの敵だったのかも、追々歴史が証明していくことだろう。

だが、そんな水面下の動きがあることも知らず、今もPRIDEの奇跡の復活を信じ、日々のネガティブなニュースに抵抗しながら、あの栄光の日々をもう一度と祈り続けているファンも居る。すこしネットを検索してみても、格闘技ファンたちのblogや掲示板では、PRIDE再開を願うファンの声が今も絶えない。特に、「PRIDEは死にません」「あんなすごいイベントが無くなる訳がないじゃないですか」と、まるで高田統括本部長が乗り移ったような熱気で、エバンジェリスト的な活動を続ける人のなんと多いことか。だが、ここまでネガティブな状況が露呈して来ると、その熱狂的な声も今や悲鳴に近い。

かつて僕はPRIDEの遮二無二なアメリカ進出の様子を“戦艦大和の特攻”になぞらえた事があるが、その伝で行けば、“PRIDE愛”溢れるファンたちの抵抗の姿は、終戦を知らないまま何十年もに南の島に立て篭った、日本人残留兵のようなものかもしれない。もし、今後本当に「PRIDE消滅」という事態が具体化し、残酷な現実として突きつけられたとき、彼らはその通牒をきちんと受け止められるのだろうか? “その日”がやって来てしまった後も、PRIDEという幻想を抜きにして、純粋に格闘技の事を好きで居てくれるだろうか?

そう思うと胸が痛い。



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