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秋山事件なぜストップできなかったか?(2)

今年の大晦日、唯一の地上波放映となった『Dynamait!!2006』を舞台に勃発した、秋山vs桜庭の“ヌルヌル”騒動。その大勝負を台無しにした物はいったい何だったのか

執筆者:井田 英登

そして、昨年(2006年)の大晦日『Dynamite!!』では、またもやとんでもない事件が勃発した。メインイベント秋山vs桜庭戦の裁定をめぐって巻き起こった、いわゆる“ベトベト”事件である。

 試合をご覧になった方はもちろん、ワイドショーを始めとする一般マスコミにも広く報道された事件なので、ほとんどの方が経緯についてはご存知だと思うが、簡単にこの事件の顛末を振り返っておこう。

 この試合、入場の時点ではこれまで通り柔道着を纏っていた秋山だったが、試合開始直前に柔道着を脱ぎ捨てている。前回10月のライトヘビー級トーナメント準決勝でも、ケスタティス・スミルノヴァスを相手に、初めて胴衣を脱いだ試合を披露しているだけに、この段階での彼の行動に疑念を抱いた人間はいなかっただろう。

 事実、試合開始直後から、秋山はパンチ中心の打撃戦で桜庭と互角の展開する。打撃を中心に戦うのであれば、胴衣は邪魔になるだけであろう。そう思わせるほど秋山の打撃は堂に入っており、しばしば桜庭を凌ぐのではと思わせる動きさえ見せていた。桜庭の早いパンチのコンビネーションを確実に躱し、逆にカウンターまで打ち込んで見せる。

 なんとかタックルで局面を変えようとした桜庭だが、秋山はコマのように反転してこれを逃れる。桜庭は掴みかけた秋山の足の部分に違和感を感じて、この試合を裁いた梅木良則レフェリーに「すっごい滑るよ!」と絶叫してタイムを要求したのだった。

 だが、このタックルの直後、桜庭は秋山のパウンドを受ける“不利な状況”に陥っていたため、梅木レフェリーは、試合をストップせずに「アクション」(試合をしろ)と切り返す。桜庭の必死の抗議は、あえなくスルーされた形になってしまった。

 一方、秋山は抗議に気を取られて防御がお留守になった桜庭の顔面に、容赦なくパンチを落とし続ける。危険状態と判断した審判団が試合をストップ、秋山の勝利を宣告したのであった。

 だが、試合終了後も抗議を止めない桜庭の剣幕に、主催者であるFEGの谷川社長は異変を感じ、試合後審判団が桜庭側のセコンド立ち会いのもと胴衣と秋山の身体をチェックを指示、オイルやワセリンの塗布がなかった事を確認したという。

ただ、実際にテレビ放映で確認されたのは、勝ち名乗り前に梅木レフェリーが上半身を軽くチェックした姿のみ。試合後の道着チェックは、少なくとも映像では確認されていない。一方、桜庭はチェックを受け入れられなかった事に大激怒、一切コメントを出さないまま会場を後にしている。

だが、事はそのままでは収まらなかった。

秋山事件なぜストップできなかったか?(3)
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