大晦日は、格闘技界を揺るがす事件の震源地
かつて大晦日の国民的行事として絶対的な支持を誇った『紅白歌合戦』。その裏番組として格闘技イベントを生中継する事で世間のド肝を抜いたのが2001年の『INOKI BOM-BA-YE 』であった。
あれから五年。すっかり年末の恒例行事となった大晦日の格闘技ビッグイベントも、既に五年目に入る。その間、K-1(Dynamite!!)、PRIDE(男祭り)、猪木祭の分裂によって三局競合となった2003年は、視聴率競争でも多いに話題となり、最終的に瞬間最大視聴率43.0%という未曾有の数字をマークしたK-1(Dynamite!!)を頂点に、『格闘技ブーム』を大きく世間に印象づけた。
だが、その裏面では、三派分裂による様々な暗闘も生まれた。
『猪木祭』を強行した元K-1系プロモーター川又誠他氏(「ケイ・コンフィデンス」代表)は、視聴率、観客動員ともに苦戦したため、日本テレビからの契約打ち切りと契約料減額の処分を受け、ギャラの不払いを残したまま海外へ逃亡するという不始末を起こしてしまった。くわえて、このイベント開催の際にPRIDE側とは、エメリヤエンコ・ヒョードルやミルコ・クロコップら人気選手の獲得合戦を展開、その内幕を後に『週刊現代』誌上で暴露。その際にヤクザとの癒着構造を指摘された事もあってか、2006年6月にはフジテレビがPRIDEの放映中止を発表する大騒動にまで発展してしまった。
その注目度の高さ、そして商業的な成功があったからこその現象でもあるだろうが、多くの人間の思惑や欲望が渦巻くようになったこの舞台は、一触即発の火薬地帯としても一流なのである。
事実、スキャンダルだけではなく、この舞台で活躍した選手は、確実にイベントの顔となり存在感を増して行く。2004年、2005年の『Dynamite!!』で大活躍した山本KID徳郁や所英夫は、一気にスターダムに上り詰めたし、2005年の『男祭り』でも並みいる海外ヘビー級戦士を押さえて、一人気を吐いた五味隆典がPRIDEの主軸選手にのし上がっている。
今や格闘技界の動向は、リングの上下を問わず、この年末のビッグイベントを中心に回っていると言っても過言ではあるまい。
秋山事件なぜストップできなかったか?(2)