高速のタックルを最大の武器に、無尽蔵とも言えるスタミナで、次々に関節技を仕掛けて行く辻のアグレッシブなファイトスタイルは、男子で言えば桜庭和志を彷佛とさせるもので、十分“金をとって見せる”に価するものだった。

キャラ的にも辻には、一種突出した“商品価値”が感じられる。町中で見れば彼女が格闘家であることを言い当てる人は居ないだろう。そんなルックスとは裏腹に、関西弁丸出しで、あまり感情の起伏を感じさせない飄々としたしゃべりを展開、時に表情一つ変えずに「チャンピオンベルトを巻いたら、浮き輪代わりに巻いて海に行きます」といったシュールなギャグ放ち、独自の雰囲気を醸し出すのである。聞く人の“笑いのツボ”を麻痺させるギャグやマイペースな佇まいからも、桜庭を連想する人は多いだろう。(後に名物となる入場でのプロレスマスクパフォーマンスは、そうした桜庭との類似を逆手に取った“パクリ”だが、今やそれ無しではファンが納得しないような名物として定着している。)

辻はその後「AX」と活動再開した「スマック」を行き来しながら連勝街道を突っ走る。辻の前に立ちふさがったのは、キックボクサー出身のジェット・イズミ、WINDY智美、空手出身の金子真理といった錚々たる面々であったが、辻の快進撃は止まらない。2002年に三大会に渡って開催された、スマックミドル級トーナメントも制覇し、同階級ではほぼ国内で敵無し状態にまで上り詰めていく。この頃にはReMix以来の無差別も階級制に改められるようになり、「ジョシカク」もいよいよ競技としての整備が進んできたのである。

トップランナーとなった辻は、「ジョシカク」の枠を飛び越えて、2003年は男子のイベントにまで進出するようになった。初戦は「DEEP」で、グラウンドでの顔面パンチを含む初のフルVTルールに挑戦。柔術の老舗であるブラジル・ノヴァウニオンの生え抜きの強豪アンナ・ミッシェル・ダンテスと対戦した。この試合では練習中の怪我の影響もあって、11戦目にして初の敗北/初の一本負けを喫するが、その敗戦ショックを越えて、年末には国民的イベントとして大注目された大晦日の「猪木ボンバイエ」に登場。全ての男性選手の試合が終了した後に、キック・ボクサー、カリオピ・ゲイツドゥとスマックルールで対戦。縦横無尽のスピーディーな動きで、男性枠の格闘技ファンからも絶賛される素晴らしい試合内容を残している。

翌年2004年8月には、スマック久々の後楽園大会で柔術茶帯の強豪エリカ・モントーヤを、顔面打撃と寝技時間制限なしのフルVTルールで撃破。序盤こそエリカのネチっこい寝技に苦しんだ辻だったが、得意の腕十字で最後に大逆転を演じてみせ、観客を興奮の渦に叩き込むと同時に、世界トップの実力を証明してみせた。

この大会で、女子総合の関係者が長らく待ち続けた選手が、ついにオープンフィンガーグローブを付けて闘うことになった。