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2.24魔裟斗不在のK-1MAXを揺らした男 「MAX最終兵器KID登場(下)」(3ページ目)

魔裟斗に続く日本No.2決定戦となった2.24K-1MAX Japanトーナメント。大本命の村浜をぶちのめして、いきなり全国区に駆け上がった山本“KID”徳郁とは何者か?

執筆者:井田 英登

■KIDは魔裟斗のライバルのし上がる事が出来るか?

好タイミングのオファーというのは、時に選手の運命を変える。

特に自前の選手を殆ど持たないK-1 MAXは、このクラスのオールスター戦の性質が強いのだが、不思議と団体のトップ選手が伸び悩む傾向が強い。

逆に全日本キックを離脱して戦いの舞台を失いつつあった魔裟斗や、日本では活躍の舞台を持たなかった須藤元気、あるいはシュートボクシングを離脱して大阪プロレスに身を投じた村浜武洋など、どこか逆境に立たされたはぐれ者が思わぬ光を放つ事が多い。いずれも失うものはない、野性味溢れた風情でこのリングに現れ、各団体のエースクラスの選手を倒して、遮二無二世間に復権してみせたアウトローばかりなのだ。

この日、リングサイドで全ての戦いを見終わった魔裟斗は「はっきりいって1人消えたね。どういう意味? そういう意味ですよ。波乱だらけの中、KIDはよかったね」と謎の台詞を残して消えたという。

スポーツマスコミでは翌日から「一人」の謎解きを巡って説を戦わせているようだが、結論としては優勝者の小比類巻説有力のようだ。だが、果たしてそうだろうか? ライバル小比類巻の三つの戦いを「相手にならない」と切って捨てる論法は、如何にも魔裟斗らしいシニカルさに溢れているようではある。だが、小比類巻を眼中に入れないのは、ずっと魔裟斗の論法であり、そもそも視野に入っていないと言うのが彼の態度だったはず。

むしろ僕はこの「一人」話に、村浜の存在を当てはめて考えた口である。
大会前、魔裟斗が優勝者予想に村浜の名前を挙げ続けたのは、この稿でも再三紹介した話である。

村浜の実力を認めるからこそ「消えた」と語ったと考えるべきであり、そのコメントのあとに、特筆して「KIDはよかった」と述べたことは重要である。
魔裟斗は村浜の屍の向こうに、かつての自分と同じ匂いを持つKIDの影を見ているように思えてならない。

村浜撃破の大金星を挙げながら、中指骨折によって二回戦をキャンセルしたKIDだが、バックステージでは「片腕だけでも戦う」と言い張るほどのエネルギーを残していたという。もし彼があのまま無傷で二回戦に歩を進めていたら、果たして小比類巻の優勝はあったかどうか?

谷川Pも翌日の一夜明け会見で早くも4月7日の「K-1ワールドMAX開幕戦」で小比類巻vsKID戦の可能性を示唆しているという。

早くもKIDの存在は魔裟斗に次ぐセンセーショナルな存在となりつつあるのだ。「総合の選手」という色眼鏡でKIDを見るべきではないことは既に、村浜戦で証明された。魔裟斗だって元を言えば、ボクシングを志向しながら挫折してキックの世界に転出してきた選手。ジャンルが選手を選ぶのではなく、選手がジャンルを選ぶのである。水が合えば、そこが彼の舞台。元アマレスも、元修斗も関係ない。その闘争心の赴くままにたどり着いた舞台がK-1であったのなら、その結果にだけ我々は注目すべきだろう。

KIDの野心が、魔裟斗のそれを乗り越える大きなうねりとなるか、その一点だけに。
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