決勝戦
8/20(日) 決勝戦
駒大苫小牧(南北海道)1 - 1早稲田実(西東京)
ここまで苦しい試合を粘りで勝ち抜いてきた、2年連続王者の駒大苫小牧と、エース斎藤の安定感ある投球で完勝してきた早稲田実との決勝戦。
先発は早稲田実・斎藤が3連投、一方の駒大苫小牧は菊地を立て、エース田中を温存。3回裏、早稲田実は1死1・2塁と攻め立てると、ここで駒大苫小牧は田中を投入。後続を0点に断ち、その後は息詰まるような見応えある投手戦に。
試合が動いたのは8回表。駒大苫小牧の2番三木が、斎藤の甘く入った直球をバックスクリーンにソロホームランで1点先制。しかしその裏早稲田実も、桧垣が二塁打を放つ。3塁に進んだ桧垣を置いて、4番後藤が犠牲フライで1-1の同点。試合はそのまま延長戦に突入。
延長11回表、駒大苫小牧に最大のチャンスが訪れる。ヒットと死球のランナーを犠牲バントで送り、1死2・3塁。ここで早稲田実は満塁策を選択。7番岡川はスクイズを敢行するものの空振り、3塁ランナーがタッチアウト。その後岡川はヒットを放つも得点には至らず、この回も無失点。
対する早稲田実も13回裏、2死満塁とサヨナラのチャンスを迎えるも、機を逃してしまう。結局、8回から15回までは両チームの投手と守備が踏ん張り、無得点のまま延長15回ゲームセット、引き分け再試合の決勝戦は翌日に持ち込まれることになった。
8/21(月) 決勝戦(再試合)
×駒大苫小牧(南北海道)3 - 4早稲田実(西東京)○
白熱する決勝戦は引き分け再試合の2連戦。両チーム先発は、早稲田実はやはりエース斎藤で、これで4連投となる。対する駒大苫小牧は前日に引き続き、菊地を立て、エース田中への継投策を狙う。試合は両チーム投手の出来にかかり、連戦の疲れで打ち合いになることも予想された。
試合は駒大苫小牧先発菊池の立ち上がりが乱調。1回裏、2死1・3塁から5番船橋のタイムリーで1点先制。ここで駒大苫小牧は菊地をあきらめ、早くもエース田中をリリーフに送る。田中は2回裏に1点を取られ、2-0と早稲田実が2点リードで試合が進む。
6回表、駒大苫小牧先頭の1番三谷が、斎藤の外角スライダーを左中間スタンドへソロホームラン。斎藤はまたも一発を浴び、駒大苫小牧が1点差に詰め寄る。しかしその裏早稲田実も8番白川のタイムリーで1点を加え、再び2点差に突き放す。
なおも早稲田実は7回裏、田中を攻めて4番後藤のタイムリーで追加点、リードを3点に広げる。このまま行くかと思われた9回表、駒大苫小牧が粘りを見せる。先頭の2番三木がヒットで出塁、続く3番の中沢が初球スライダーをセンターバックスクリーンに2ランホームラン。再び1点差に詰め寄る。
しかし反撃はここまでで、斎藤は残る3人を完璧に仕留める。最後は6番田中を三振に取り、2日間に渡る長い延長戦もようやくゲームセット。夏の甲子園三連覇を狙う駒大苫小牧は、早稲田実の実力の前に阻まれることになった。
結局、初回と2回の1点ずつが最後まで主導権を握った形になった決勝戦再試合。先発を田中で行くべきだったか、または菊地を諦めるのが早かったか議論が分かれるところだが、やはり連投の疲れの中、終盤に崩れはしたものの制球を乱さず13三振を奪った早稲田実のエース斎藤の圧倒的な投手力が雌雄を決したと言えるだろう。
総評
今夏の甲子園は、地方大会がやや天候不順に悩まされたものの、おおむね天気に恵まれ暑い日が続いた。地方大会の終盤戦から続く過密日程と暑さで、投手には酷な大会だったと言えよう。また、打撃力向上と飛ぶボールのおかげもあって、結果的にホームランや乱打戦が多く、劇的な一戦が何度も続き、盛り上がりを見せた。
だが、その劇的さとは裏腹に、飛ぶボールの使用は投手受難で、投手に危険が及ぶこともあり、また締まったゲームを展開できなくなる。来年以降は使用球が変更され、今年のような大激戦が見られなくなるかもしれないが、その方が野球全体レベルの向上に繋がるだろう。
そんな中でやはり光ったのは、早稲田実・斎藤と駒大苫小牧・田中の両エースの好投である。特に斎藤は7試合の殆どを一人で投げ抜き、打高投低の大会で防御率1点台と驚異的な安定感を見せた。高校生投手としては、高校時代の松坂大輔(西武)よりもスタイルは完成されており、プロ入りならば即戦力2ケタ勝利の実力はあるだろう。新たな球種を覚える必要があるかもしれないし、全体的なブラッシュアップも必要だが、投手のタイプとしてはポカがあるところを含めて、巨人の上原を彷彿とさせる。とにかくポスト松坂世代では最高の投手であり、将来の日本のエースになることは間違いないだろう。
一方、田中も好素材である。斎藤の前に霞んでしまう部分はあるが、落ちるスライダーという決め球のキレはよく、ポスト松坂の甲子園活躍投手である、寺原やダルビッシュと同レベルにあると見ている。プロ入り希望のようだが、うまく育てば数年後にチームのエース格となることだろう。
そして毎度のように苦言を呈したいのは、甲子園の過密日程と投手酷使である。斎藤のようにスタミナと回復力を持ったスーパー素材ならいざ知らず、普通の好投手が地方大会を何連投、そして甲子園終盤を何連投とすると、将来的な素材を潰すことになる。まして、上位校で活躍した選手は、休む間もなく日米野球に招集される。甲子園球場の使用問題もあるだろうが、高野連には終盤日程の見直しを強く要求したい。