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【高校野球】2006夏の甲子園、熱戦十番(3ページ目)

2006夏の甲子園は、3年連続優勝を狙う駒大苫小牧を早稲田実が決勝戦引き分け再試合の末に下し幕を閉じた。打高投低の影響もあって劇的な試合が相次いだが、そんな2006甲子園の名勝負十試合を振り返ってみる。

執筆者:コモエスタ 坂本

決勝戦


8/20(日) 決勝戦
駒大苫小牧(南北海道)1 - 1早稲田実(西東京)

ここまで苦しい試合を粘りで勝ち抜いてきた、2年連続王者の駒大苫小牧と、エース斎藤の安定感ある投球で完勝してきた早稲田実との決勝戦。

先発は早稲田実・斎藤が3連投、一方の駒大苫小牧は菊地を立て、エース田中を温存。3回裏、早稲田実は1死1・2塁と攻め立てると、ここで駒大苫小牧は田中を投入。後続を0点に断ち、その後は息詰まるような見応えある投手戦に。

試合が動いたのは8回表。駒大苫小牧の2番三木が、斎藤の甘く入った直球をバックスクリーンにソロホームランで1点先制。しかしその裏早稲田実も、桧垣が二塁打を放つ。3塁に進んだ桧垣を置いて、4番後藤が犠牲フライで1-1の同点。試合はそのまま延長戦に突入。

延長11回表、駒大苫小牧に最大のチャンスが訪れる。ヒットと死球のランナーを犠牲バントで送り、1死2・3塁。ここで早稲田実は満塁策を選択。7番岡川はスクイズを敢行するものの空振り、3塁ランナーがタッチアウト。その後岡川はヒットを放つも得点には至らず、この回も無失点。

対する早稲田実も13回裏、2死満塁とサヨナラのチャンスを迎えるも、機を逃してしまう。結局、8回から15回までは両チームの投手と守備が踏ん張り、無得点のまま延長15回ゲームセット、引き分け再試合の決勝戦は翌日に持ち込まれることになった。

8/21(月) 決勝戦(再試合)
×駒大苫小牧(南北海道)3 - 4早稲田実(西東京)○

白熱する決勝戦は引き分け再試合の2連戦。両チーム先発は、早稲田実はやはりエース斎藤で、これで4連投となる。対する駒大苫小牧は前日に引き続き、菊地を立て、エース田中への継投策を狙う。試合は両チーム投手の出来にかかり、連戦の疲れで打ち合いになることも予想された。

試合は駒大苫小牧先発菊池の立ち上がりが乱調。1回裏、2死1・3塁から5番船橋のタイムリーで1点先制。ここで駒大苫小牧は菊地をあきらめ、早くもエース田中をリリーフに送る。田中は2回裏に1点を取られ、2-0と早稲田実が2点リードで試合が進む。

6回表、駒大苫小牧先頭の1番三谷が、斎藤の外角スライダーを左中間スタンドへソロホームラン。斎藤はまたも一発を浴び、駒大苫小牧が1点差に詰め寄る。しかしその裏早稲田実も8番白川のタイムリーで1点を加え、再び2点差に突き放す。

なおも早稲田実は7回裏、田中を攻めて4番後藤のタイムリーで追加点、リードを3点に広げる。このまま行くかと思われた9回表、駒大苫小牧が粘りを見せる。先頭の2番三木がヒットで出塁、続く3番の中沢が初球スライダーをセンターバックスクリーンに2ランホームラン。再び1点差に詰め寄る。

しかし反撃はここまでで、斎藤は残る3人を完璧に仕留める。最後は6番田中を三振に取り、2日間に渡る長い延長戦もようやくゲームセット。夏の甲子園三連覇を狙う駒大苫小牧は、早稲田実の実力の前に阻まれることになった。

結局、初回と2回の1点ずつが最後まで主導権を握った形になった決勝戦再試合。先発を田中で行くべきだったか、または菊地を諦めるのが早かったか議論が分かれるところだが、やはり連投の疲れの中、終盤に崩れはしたものの制球を乱さず13三振を奪った早稲田実のエース斎藤の圧倒的な投手力が雌雄を決したと言えるだろう。

総評


今夏の甲子園は、地方大会がやや天候不順に悩まされたものの、おおむね天気に恵まれ暑い日が続いた。地方大会の終盤戦から続く過密日程と暑さで、投手には酷な大会だったと言えよう。また、打撃力向上と飛ぶボールのおかげもあって、結果的にホームランや乱打戦が多く、劇的な一戦が何度も続き、盛り上がりを見せた。

だが、その劇的さとは裏腹に、飛ぶボールの使用は投手受難で、投手に危険が及ぶこともあり、また締まったゲームを展開できなくなる。来年以降は使用球が変更され、今年のような大激戦が見られなくなるかもしれないが、その方が野球全体レベルの向上に繋がるだろう。

そんな中でやはり光ったのは、早稲田実・斎藤と駒大苫小牧・田中の両エースの好投である。特に斎藤は7試合の殆どを一人で投げ抜き、打高投低の大会で防御率1点台と驚異的な安定感を見せた。高校生投手としては、高校時代の松坂大輔(西武)よりもスタイルは完成されており、プロ入りならば即戦力2ケタ勝利の実力はあるだろう。新たな球種を覚える必要があるかもしれないし、全体的なブラッシュアップも必要だが、投手のタイプとしてはポカがあるところを含めて、巨人の上原を彷彿とさせる。とにかくポスト松坂世代では最高の投手であり、将来の日本のエースになることは間違いないだろう。

一方、田中も好素材である。斎藤の前に霞んでしまう部分はあるが、落ちるスライダーという決め球のキレはよく、ポスト松坂の甲子園活躍投手である、寺原やダルビッシュと同レベルにあると見ている。プロ入り希望のようだが、うまく育てば数年後にチームのエース格となることだろう。

そして毎度のように苦言を呈したいのは、甲子園の過密日程と投手酷使である。斎藤のようにスタミナと回復力を持ったスーパー素材ならいざ知らず、普通の好投手が地方大会を何連投、そして甲子園終盤を何連投とすると、将来的な素材を潰すことになる。まして、上位校で活躍した選手は、休む間もなく日米野球に招集される。甲子園球場の使用問題もあるだろうが、高野連には終盤日程の見直しを強く要求したい。
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